「法律家として悲しい」集団的自衛権の憲法学者があきれるずさんな議論 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「法律家として悲しい」集団的自衛権の憲法学者があきれるずさんな議論

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 今国会中に集団的自衛権を使えるようにする閣議決定に踏み切りたい安倍内閣。首都大学東京准教授で憲法学者の木村草太さん(33)はこのままでは違憲判決が下されるとこう警鐘を鳴らす。

*  *  *
 日本相撲協会は1985年、関取が起こした交通事故をきっかけに力士の運転を禁止しました。この“決まり”は集団的自衛権を考える際の参考になります。

 国際法上、国家は集団的自衛権を持っています。お相撲さんが免許を取得できるのと同じです。ですが行使に“決まり”を課す国は少なくありません。

 ドイツは相手国と条約を結ぶ必要があります。アメリカは議会の承認が求められます。なので「日本は権利がある。行使できて当然」という意見は間違いです。お相撲さんが車を運転したいのなら、協会の規則を変えなければなりません。

 行使容認のハードルは二つ。一つは憲法9条。二つ目は根拠が憲法に存在しないことです。個別的自衛権には根拠があります。例えば13条には国民の生命を守ることが定められています。しかし、他国と協力して海外で戦闘を行うことを日本国憲法は想定していません。

 首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書は、率直に言って法律家として悲しくなりました。無理やりでも根拠を見つけるかと思っていたのですが、それすらしていない。私だけでなく、権威ある憲法学者の方々が「これでは違憲だ」と判断しています。

 憲法解釈の権限は内閣にも国会にもありません。裁判所だけが持っています。具体的には最高裁です。このまま集団的自衛権が行使され、訴訟となった場合、最高裁が違憲判決を下す可能性は高いでしょう。将棋の名人と小学生が対局するレベルです。最悪の場合、日本の法体系でも“敵”の軍隊に賠償金を払うことすら考えられます。これは安全保障上の大問題です。

 これまで政府は内閣法制局の意見に従ってきました。それは彼らが優れた顧問弁護士だったからです。ところが今回は「違憲でもやる」という雰囲気です。メディアも「寝た子を起こす」と、改憲の必要性に触れる報道が少なかった。全てが不誠実と言わざるを得ません。

 安倍首相は会見で日本人の赤ちゃんと母親の絵を示しましたが、あれもおかしな話です。そもそも集団的自衛権とは同盟国のために血を流すことなのです。むしろ「世界平和のため紛争地域に自衛隊を派兵する。憲法は改正し、法整備を行う」と宣言したなら、憲法学者でも賛成者が出たはずです。国民議論もずっと実りあるものになったでしょう。それでも私は反対しますが、議論のずさんさにあきれるということはなかったと思います。

 結局、首相は米国に喜んでもらいたいのでしょう。米国が評価するのは、中東やアフリカといった「本当の外国」で武力行使に踏み切ることだということをわかっていますか?

週刊朝日  2014年6月20日号


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