子宮筋腫や子宮内膜症などと並んで、「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」という病がある。良性の婦人科疾患の一つだが、自覚症状が少なく、卵巣がねじれを起こし、激痛で救急搬送されることも少なくない。

 卵巣嚢腫が見つかっても大きさが5センチ未満で手術を選択しない場合、経過観察が基本となる。症状がないと、つい放置してしまいがちだが、経過観察には大きさを診るだけではなく、卵巣嚢腫ががん化してしていないかを確認するという目的もある。東京逓信病院婦人科腫瘍専門医の秦宏樹医師に話を聞いた。

*  *  *

 卵巣嚢腫は、良性と診断されても、将来がん化する危険性があります。当院で2005年4月から12年1月までに卵巣がんと診断された51人のうち、卵巣嚢腫の経過観察中だった患者さんは7人いました。そのうち5例が子宮内膜症性嚢胞、残りが粘液性腺腫の患者さんでした。

 一般的に卵巣に腫瘍や嚢胞がある場合、がん化しやすいのは、この二つのタイプです。大きさは関係ありません。粘液性腺腫の場合は、良性の腫瘍が徐々にがん化していき粘液性腺がんになりますが、子宮内膜症性嚢胞の場合は、卵巣の中に新たに明細胞腺がんができてきます。明細胞腺がんは、卵巣がんの中でも抗がん剤が効きにくく、治りにくいがんです。

 卵巣がんは、近年増加傾向にあり、年間約8千人が発症して、約4500人が死亡しています。早く見つけるためには定期健診を受けるしかありません。

※週刊朝日 2012年7月20日号