4月16日、ある大物知事が東京・永田町にやってきた。向かった先は衆院第1議員会館地下1階の会議室。集まった民主党の小沢一郎元代表のグループ議員約30人を前に講演した。内容は「地方分権のさらなる促進を」というオーソドックスなもの。だが、「なぜいま小沢派に」と、他グループからはいぶかる声が……。
愛媛県の中村時広知事(52)と聞いて、ピンとくる方はよほどの政治通だ。三菱商事勤務後、愛媛県議を経て1993年に日本新党から衆院議院初当選。99年から松山市長を3期途中まで務め、2010年に知事となった。
その中村氏が、小沢氏が会長を務める「新しい政策研究会(新政研)」で講演することが決まり、永田町の「事情通」や「関係者」たちは色めきたった。今や国政を左右しかねない勢いの橋下徹大阪市長(42)が「とにかく痛快な人」と心酔しているからだ。
中村氏は09年の政権交代直前に、中田宏横浜市長(当時)らとわずか5人で立ち上げた「首長連合」の一人で、「既存のものを壊すのが大好き」という橋下氏と同タイプの政治家。その橋下氏への影響力も並ではない。
「政治資金の集め方や、府県と県庁所在地の首長を同時に掌握するメリットなどを教えた」(中村氏をよく知る閣僚経験者)
松山市長を任期途中で辞職して知事選に当選。同日選となった松山市長には息のかかった候補者を押し上げた。また県議会や松山市議会に「維新」と名がつく会派を立ち上げており、愛媛と大阪の政治地図は驚くほど酷似している。
ちょうど橋下氏が「小沢先生の行動は筋がとおっている」などと小沢氏を絶賛した後なだけに、「小沢氏と橋下氏の橋渡しにきたのでは」との疑心暗鬼が党内外に広がっている。
※週刊朝日 2011年5月4・11日合併号