被災地で決断する女たちのホンネ (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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被災地で決断する女たちのホンネ

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週刊朝日

■仮設住宅への引っ越しも徐々に進んでいる■

 非常時にこそ、人間性が露呈するという。

「今回の震災で、主人がどんなにダメな人間かがわかりました。原発を恨む気持ちはありますが、あんな人ときっぱり別れる決心ができたことはよかったと思っています」

 こう話すのは、福島県の中部に住む山岡美紀さん(仮名・41)だ。山岡さんは現在、夫と離れ、小学生の息子と幼稚園の娘を連れて広島県に避難している。

 福島第一原発の事故が起きた直後は、山岡さんも放射能の影響をさほど気にしていなかった。同じ県内といっても50キロ以上離れていたからだ。

 だが、連日の報道で放射能汚染の広がりが明らかになるにつれて、不安を感じるようになってきた。子どもを守ろうと外で遊ぶことを禁じ、内部被爆を避けるため学校で給食を食べることもやめさせた。

 それでも不安は拭えない。息子の同級生のなかには、子どもを連れて遠方に引っ越す家族も出てきた。「自分たちも遠くに引っ越したほうがいいのでは?」と夫に相談したが、「大丈夫だろう」の一点張り。無頓着さに不信感が募った。

 そんなある日、幼い子どもを抱える知り合いの母親から、10万円以上もする放射線量測定器を購入したと聞いた。居ても立ってもいられなくなって山岡さんも購入したが、それを見た夫は怒りだし、激しい口論になってしまったという。

「どうしてそんな高いものを買ったんだ」

「子どもの健康、安全を守るために必要だからに決まってるでしょ」

「放射能なんて、過敏になる必要はない。そのうち子どもは育つ。とにかくそんな高いものをオレのカネで買うな! 返品しろ!」

 その日から、口を開けば測定器を巡って口論ばかり。当時を振り返って山岡さんが言う。

「主人は近所に住む自分の両親まで連れてきて、一緒になって『なんでそんな高い買い物をしたんだ。すぐに返品しなさい』と繰り返す。そのくせ余震が起きると、いつも私や子どもを放って、我先に一人で机の下に隠れてしまう。私は必死に覆いかぶさって子どもを守っていたのに、後から『おまえらも無事でよかったな』なんて言うんですよ。こんなダメな人だったのかと、すべてが悪く見えるようになってしまいました」

 そして、山岡さんはついに行動に出た。6月上旬、署名した離婚届を置き、子どもを連れて家を出たのだ。


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