原発は低コストのウソ「原発廃絶なら値上げ」は恫喝だ! 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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原発は低コストのウソ「原発廃絶なら値上げ」は恫喝だ!

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 経済産業省を中心とした時代遅れの原子力マフィアたちは、何も知らない国民を恫喝するために、「原発を廃絶すると、石炭や天然ガスの燃料コストが上昇して、一家庭当たり毎月1千円の電気料金の上昇になる」と騒ぎ始めたが、これこそ真ッカッカの大嘘である。

 電気代は、電力会社が公益事業だからという理由で、すべての必要経費を計上したあと、その4・4%相当分の報酬を加えるというように、原価コストに一定の利益を加算する「総括原価方式」によって決められる。そこで電力会社は、巨額の建設費と出費を要する原発をつくればつくるほど、高い電気代を徴収できる。一般企業がコスト削減に必死になるのに、電力業界は、むしろ無駄な出費増加で莫大な利益をあげる。これが彼らを、原発に走らせてきた諸悪の根源である。

 加えて原油などの燃料費が高騰した場合、3カ月後には、それに応じて電気料金が引き上げられる。これは理屈に合っているようだが、地域を独占する電力会社に競争相手はなく、好き放題に電気料金を引き上げてきた。

◆廃棄物処理費用、74兆円の可能性◆

 そこで立命館大学の大島堅一教授は、これまでマスメディアが検証もせずに引用してきた政府試算値(2004年公表)の発電価格をチェックしてみた。その結果、1キロワット時の発電量当たり、液化天然ガスが6・2円、石炭火力が5・7円、石油火力が10・7円、一般水力が11・9円に対して、原発が5・3円といちばん安くなっていることが、まったくの間違いであることを明らかにした。

 それは、原発のコスト計算では、莫大な政府予算が投入されている研究開発費や立地対策のカネが入っていない。加えて、原発と火力では、設備稼働率を80%と仮定しているが、原発の稼働率はせいぜい60%にしかならない。火力も30%しか動いていない。特に、夜間の原発余剰電力を利用するために建設されてきた巨大な揚水発電ダムの莫大な費用を計算すると、原発が最も高くなる。電力への財政支出には、一般会計のエネルギー対策費と、エネルギー対策特別会計(電源開発促進対策特別会計=電源三法交付金)があり、この財政支出を加えた総合の発電コスト(1970~2007年度平均)は、実際には一般水力が3・98円、火力が9・9円、原子力が10・68円で、揚水発電を加味した「原子力+揚水」は12・23円になるのである。

 話はこれで終わらない。さらにとてつもない量の放射性廃棄物という処分不能の危険物が発生し、それを処理することをバックエンドと呼んでいるが、ここに巨大なコストがかかる。電力会社は、プルトニウムを再利用すると銘打ったプルサーマル運転を強行してきたが、これを前提にしたバックエンド費用の試算結果は、2004年に政府の総合資源エネルギー調査会が報告した内容によると、六ケ所再処理工場を40年動かすとして、建設・操業・廃止を含めた再処理費用が11兆円、放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分やMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合燃料)の加工など、関連するほかの費用を合わせると18兆8800億円に達する。

 ところが、この大島教授に取材した経済誌の週刊東洋経済が、このコストを疑って試算したところ、実際にはその4倍の、74兆円に膨らむ可能性があることがわかった、とある。週刊東洋経済6月11日号が、「強弁と楽観で作り上げた『原発安価神話』のウソ」と題して、これだけ明確に原発のコスト計算の裏を暴いているのだから、「火力を使えば電気料金が上がる」というストーリーは大嘘である。

 もともと電力会社が原発で使ってきた無駄で巨大な出費をなくせば、逆の結果になる。実際には、自家発電の特定規模電気事業者(PPS)の電気料金は、電力会社より2割前後も安いのだ。つまり現在は、原発のために、とてつもなく高い電気料金を徴収されているのである。特に無駄で、まったく将来性のない高速増殖炉もんじゅと、六ケ所再処理工場は、即刻、閉鎖しなければならない。そして原発から出る高レベル放射性廃棄物が莫大なコストを電気料金に加えているのだから、これ以上の高レベル放射性廃棄物が出ないように、一刻も早く原発すべてを廃止しなければならない。

 原発廃止への推進力となる反原発運動についても、一言申し上げたい。

 電力会社の原発はほぼ5千万キロワットだが、今夏のピーク時には、福島第一の廃炉が決まり、福島第二、東通、女川、東海第二が全滅し、浜岡が停止、柏崎刈羽が3基再起不能で停止、さらに全土で定期検査中の原発が運転再開不能のため、事実上1300万キロワットしか稼働しない状況にある。

 この頼りない原発より、資源エネルギー庁が公表している産業界の保有する自家発電6千万キロワット(昨年9月末現在)のほうが、はるかに大きなバックアップとしての発電能力を持っている。
「原発の代替エネルギーとして自然エネルギーに転換せよ」という声が圧倒的に多いが、日本人が"快適な生活"をするために使っている電気の大半を生み出しているのは、現在は火力発電である。この火力発電は、日本においてきわめてすぐれた世界最高度のクリーンな新技術を導入しているので、何ら問題を起こしていない。決して原発が、電力の大半をになっているのではない。原発は事故続きで、4分の1も発電していない。

 自家発電をフルに活用すれば、このすぐれた、クリーンな火力だけで、「まったく現在のライフスタイルを変えずに、節電もせずに、工場のラインを一瞬でも止めることなく」電気をまかなえる。これは、将来、自然エネルギーが不要だと言っているわけではない。多くの人が抱いている「自然エネルギーで代替しなければ原発を止められない」という現在の反原発運動の固定観念は、まったくの間違いである。原発廃絶は、反原発運動の自己満足のために実現されるべきものではない。産業界も含めた、すべての日本人のために進められるべきである。

 将来のエネルギー構成をどうするべきかについてはここで論じないが、原発を止めるのに、選択肢の一つである自然エネルギーは、今のところ特に必要ではない。つまり、産業界を味方につけて自家発電をフルに活用し、原発を止めることのほうが、もっと重要である。

◆ただちに必要な送電価格値下げ◆

 本誌6月10日号で特集したように、週刊朝日でこの連載を担当している堀井正明記者が各電力会社に取材した結果、興味深い電力需給についての裏の構造が明らかになった。全国で、電力会社が他社受電の発電能力を秘密にして、取材にも答えようとしなかった。特に九州電力だけは、「発電設備ごとの能力の内訳は公開していない。経営戦略情報なので教えられない」と、火力・水力・他社受電(自家発電からの買い取り)・原子力の内訳さえも答えないというトンデモナイ非常識な態度をとった。この九州電力が、原発を動かせないので夏に電力不足になる、と言い立てている。

 なぜ電力会社は、これら当たり前の事実を隠そうとするのか、という疑問から、ここで重大なことが明らかになった。

 それは、彼らが安い電気を民間企業から買い取って、高い電気料金でわれわれに売って利益をあげている暴利の構造である。それを知られたくないばかりか、もう一つ「電力会社が自家発電をフルに利用すれば電力不足が起こらない」、この事実を国民に知られると、産業界からも、一般消費者からも、「送電線を自家発電の民間企業に開放せよ!」という世論が生まれる。そして制度が改善されて、誰もが送電線を自由に使えるようになると、地域を独占してきた電力会社の収益源の牙城が崩れる。送電線の利権だけは、何としても電気事業連合会の総力をあげて死守する必要がある、と彼らは考えている。九つの電力会社にとって、福島原発事故を起こした今となっては、原発の確保より、送電線の確保のほうが、独占企業としての存立を脅かすもっと重大な生命線である。そのため、自家発電の電気を買い取らずに、「15%の節電」を要請するという行動に出てきたのである。

 したがって日本人は、「自然エネルギーを利用しろ」と主張する前に、「送電線をすべての日本人に開放せよ!」という声をあげることが、即時の原発廃絶のために、まず第一に起こすべき国民世論である。何しろ、送電線が開放されて、安価に送電できなければ、自家発電ばかりでなく、自然エネルギーの自由な活用もできないのだから。

 しかし送電線事業の分離には時間がかかると予想されるので、それまで電力不足が起こらぬよう、国会は、全産業が安い送電費用で電気を供給できるよう、ただちに電力会社に送電価格値下げの命令を下し、それによって国民生活と企業活動を守ることが至上命題である。 (構成 本誌・堀井正明)

ひろせ・たかし 1943年生まれ。作家。早大理工学部応用化学科卒。『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)、『原子炉時限爆弾--大地震におびえる日本列島』(ダイヤモンド社)など著書多数。今回の連載に大幅加筆した新刊『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』(朝日新書)が5月13日に緊急出版された


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