水野美紀
水野美紀 「母」になって湧いてきた「女優」としての新たな欲求とは
水野美紀さん/俳優。ドラマ・映画・舞台で活躍中。<出演情報> NHK 連続テレビ小説「スカーレット」に出演中(NHK総合 月曜~土曜 朝8:00~)。レギュラー番組 讀賣テレビ「水野美紀の映画生活(シネマライフ)」毎週金曜22:54~<関西ローカル> http://www.ytv.co.jp/cinemalife/
イラスト:唐橋充
42歳での電撃結婚。そして伝説の高齢出産から2年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。今回は「芝居」について。
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朝ドラ、本のパブ、ドラマの番宣などをやらせてもらいながら、舞台の稽古に勤しんでいる。
久しぶりに下北沢の稽古場に通う日々。
妊娠前には多い時には週5で通っていた下北沢。
ほぼ3年ぶりにブラついてみると、駅は新しくなっているし入れ替わっているお店もたくさん。
だけど昔から変わらない場所の方が多くて、街の雰囲気が一変した、という感じはしない。
懐かしい街。
この街で交差した、たくさんの知人友人の顔がよぎる。
みんな元気にやっているのだろうか。
今作っている芝居のテーマは「忘却」だ。
「今」とはどこにあるのか。
忘れられた過去に、存在した意義はあるのか。
新しいノートパソコンを購入したことにより無事に脚本を脱稿し、お稽古に突入している。
今回は11人の役者、プラスゲストで紡ぐ群像劇。
個性がバラバラで見ていて面白い。
お稽古には段階がある。
最初に読み合わせをし、自分の「役」と初めまして、自分以外の「役」たちとも初めまして、の段階は楽しい。
そこから、セリフと動きが身体に入るまでが苦しい。
そこを乗り越えて、相手との掛合いを楽しめる域まで行けば、そこから再び楽しくなる。
理屈で細かく詰めて詰めて役を構築して、最後に理屈から解放されて自由になるのだ。
それを共同作業でやるのだから大変なのだ。
でも、その大変な作業を乗り越えた時の達成感はとても大きい。
今、まだ我々は苦しい作業の真っ只中。
劇中に漫才が入るのだが、そこはプロに稽古をつけてもらっている。
立ち方、身体や手の角度、目線の置き方、などなど、漫才を成立させるための、芝居とはまた別物のテクニックが山ほどあるのだ。
本当にちょっとしたことで見え方が劇的に変わる。
それが面白いし、怖いところでもある。
演劇の街下北沢で、再びこんな風に芝居に浸かっている。
ちびを授かる前には、ほんとに朝から晩まで芝居のことを考えていたものだった。その頃の感覚が懐かしく甦っている。
あのままずっと芝居に浸かっていたら、今頃どんな芝居を作っていただろうか。
ちびに「母」という役割を与えてもらって、一旦、自分の人生を見つめ直した今の私から出てくるものは、お客さんにどんな風に響くだろうか。
今、新たな欲求も湧いている。
劇場でもっと、子供と一緒に楽しめる作品を作れないだろうか。
音楽や照明を駆使した、絵本の読み聞かせイベントなんて、どうだろう。
小さな子供たちにも、劇場を身近な存在にできないものか。
何より自分が、ちびと一緒に楽しみたい。
劇場から発信するもので、たくさんの人と繋がりたい。
とにかく手探りでやってみるか。
そんなことを考えている。
実現できたらいいな。
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dot.
2019/11/21 11:30