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 3月31日、52年にわたって全215作が放送された東海テレビ制作の昼ドラマが終了した。これは情報番組をリレーした「15時間生放送」を実現するための改編だが、TBS制作の「愛の劇場」終了後、同枠は「昼ドラ最後の砦」だっただけにファンのショックは大きい。昼どころか民放の帯ドラマそのものが消滅してしまったのも問題だが、何より残念なのは、過剰な愛憎劇と独特のセリフ回しが癖になる中島丈博の脚本作品や、「花嫁のれん」のような人情あふれる名シリーズがもう見られないことだ。

 しかし、わずか2日後の4月2日、どの春ドラマよりも早く、東海テレビ制作の「火の粉」(毎週土曜23時40分~)がスタートした。「一家殺人事件の容疑者だった主人公が、無罪判決を下した元裁判長の家族に近づき、翻弄していく」という物語に救いや明るさはない。主人公がバームクーヘンを手作りし、害虫を駆除するだけで不気味さが漂い、元裁判長の家族に優しく接するほど恐怖を感じさせるのだから、当作がサスペンス一本に絞って勝負していることがわかる。

 市野プロデューサーが、「昼ドラの魂を受け継ぐ作品」と語ったように、他の連ドラとは明らかに毛色が異なるのだが、そう感じる理由は「視聴者にしっかりストレスを与えている」こと。もともと連ドラは、うまくいかないもどかしさや、謎解きが進まないイライラなどのストレスが、楽しく見るためのスパイスとなっていた。しかし、最近はサスペンスですら息抜きのシーンを挟んでストレスを軽減させ、各話の終盤できっちりストレスを回収するなど、心理的な配慮が必須条件のように行われている。

 一方、この作品に息抜きのシーンは存在しない。静かなトーンながらも、「やりすぎでは?」というところまで、怖さや危うさで畳みかけてくるのだ。つまり、一切の緩和はなく、あるのは緊張感と不穏なムードだけ。だからこそ、「この先どこまで行くのかな」という怖いもの見たさに魅力を感じる人は多いのではないか。「怖さだけで振り切ろう」という姿勢も、ケレン味たっぷりの芝居も、昼ドラのDNAが当作に受け継がれたことを感じずにはいられない。曜日も時間帯も異なれば当然別の作品になってしかるべきだが、根っこにあるものは同じ。当枠を「オトナの土ドラ」と名づけたのは、昼ドラとの姉妹関係を示しているように映るのだ。

 主演のユースケ・サンタマリアが「久々に燃えている」と話すように、作品の熱は間違いなく高い。土曜夜は”昼ドラの妹”から心地よいストレスを味わってみてはいかがだろうか。G

●きむら・たかし ちなみに、「オトナの土ドラ」第2弾は「朝が来る」。「エッ?」と耳を疑うような作品名だが、それも昼ドラのDNA。深夜枠だけに、視聴率うんぬん