池上彰さん(写真左)と保阪正康さん
池上彰さん(写真左)と保阪正康さん

 大国が自らの権益を剥き出しに主張しつつある昨今。ロシアのウクライナ侵攻は、いやが応でも第二次世界大戦とその始まりを連想させる。発売中の『歴史道 Vol.22 第二次世界大戦の真実』(朝日新聞出版)では、最新刊『歴史の予兆を読む』を上梓したばかりの池上彰氏と保阪正康氏が、前(さき)の大戦の真相について語り合った。当代を代表する二人の論客は、世界大戦の「過去・現在・未来」をいかに考えたか?

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池上:今、まさに進行中のロシアのウクライナ侵攻と、第二次世界大戦の元凶とされるナチス・ドイツによる数々の侵略行為を重ねて見ている「歴史好き」は少なくないでしょう。特に『歴史道』の愛読者には多そうです。保阪さんとは「歴史の予兆」という難しいテーマで大いに議論して対談本を出しましたが、「歴史の真相」というのも、そんなに簡単なテーマではありません(笑)。

保阪:僕は第一次世界大戦と第二次世界大戦を調べていて、一つの結論に至りました。それは「第一次大戦と第二次大戦は連結している」ということ。二つの大戦、そして戦間期と、ともすると切り離して歴史的事象を眺めがちですが、前半戦と後半戦のような繋がった形の見方をしないと、真相は見えてこないんですよ。

池上:たとえば、ドイツに対する第一次世界大戦の戦後処理の「失敗」が第二次世界大戦の引き金になったといった見方ですよね。

保阪:そうです。ヒトラーは、まさに「戦争で失ったものは戦争で取り返す」という考えの持ち主でした。そのことも、二つの大戦を繋げて見ないと、第二次世界大戦を理解できないと確信した理由の一つです。チャーチルも「戦間期とは、戦争が煙草を吸ってひと休みしていたに過ぎない」と言っています。僕の前半戦と後半戦という見方と非常に近い。さすがにチャーチルのほうがうまい言い方をするなと感心しますが(笑)。

池上:第二次世界大戦では、当然ながらルーズベルトの考えも重要でした。

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そもそも、なぜ「世界大戦」と呼ぶのか…