「刀鍛冶の里編」のキーマンとなる不死川玄弥。(画像はコミックス「鬼滅の刃」13巻カバーより)
「刀鍛冶の里編」のキーマンとなる不死川玄弥。(画像はコミックス「鬼滅の刃」13巻カバーより)


【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

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鬼滅の刃』アニメ3期では、これまで主人公・炭治郎がともに戦ってきた、善逸と伊之助が登場しない。善逸と伊之助には根強いファンが多く、彼らが登場しない新シリーズに「寂しい」というファンの声も聞こえてくる。なぜ「刀鍛冶の里」では、炭治郎と一緒に戦う“同期”が玄弥なのか。特殊な戦い方をする玄弥だけが持つ「役割」について考察すると共に、炭治郎と玄弥に共通する“悲しき鬼狩り”の背景を探る。

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■善逸と伊之助がいない「刀鍛冶の里」での戦い

 水柱・冨岡義勇に錆兎(さびと)や村田といった同期がいたように、物語の主人公・竈門炭治郎には、4人の同期がいる。

 鋭敏な皮膚感覚(触覚)の持ち主である嘴平伊之助、人の感情まで聴き分ける(聴覚)ことができる我妻善逸、目に特化した能力(視覚)を持つ栗花落カナヲ、そして「口」にまつわる特殊な力に恵まれた不死川玄弥だ。「五感」が発達した能力者――これが嗅覚に優れた炭治郎を含む、彼らの「特別な能力」だ。

 炭治郎は鼓の鬼との戦闘以降、善逸と伊之助の人柄にふれ、少年らしい友情を育みながら、ともに剣士として成長していった。しかし、アニメ新シリーズ「刀鍛冶の里」では、善逸も伊之助も登場しない。それは一体なぜなのか。

■優れた剣技を誇るカナヲ・善逸・伊之助

 炭治郎の同期たちは、炭治郎も含めて極めて優秀な剣士である。しかし、その中でもカナヲ・善逸・伊之助は、エピソードが明らかに「天性」を思わせる描写に満ちている。蟲柱・胡蝶しのぶの継子として、早くから認められていたカナヲ。戦闘中に「眠って」しまうという欠点を抱えながらも、すでに鳴柱・桑島慈悟郎(くわじま・じごろう)の継承者に指名されていた善逸。独力で鬼殺隊に入隊できるほどの実力を身につけていた伊之助。

 それに対して、地道な訓練を積みながら、平凡な「炭焼き」から鬼狩りへと成長していった炭治郎と、鬼狩りの武具・日輪刀を「色変わり」させる能力すら持たない玄弥は、彼らに比べると「才覚」の開花が遅いように感じられる。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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玄弥が抱く「戦いの秘密」