「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。連載19回目の今回は、今まで塾と野球を両立してやってきた小6のお母さんからの相談です。

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安浪:こういうご相談、結構たくさん受けているんですよ。5年生がまず1回目にご相談を受ける時期ですね。5年になると塾が忙しくなりますし。そして本気で野球やサッカーといったチームスポーツをしている男の子たちは、みんなここでやめるとは言わないです。

矢萩:そうですね。本人がやりたいっていうならやめる必要はないわけだし。その場合は、安浪さんはどのように指導しているんですか?

安浪:ケースバイケースですけれど。今年中1になった男の子の場合は、小5の段階で「塾が嫌だ」って言ったんですね。野球も忙しいのに、通塾日が増えて週に3日も通うのがしんどいって。親御さんとしては、息子さんは公立には向いてないから私立を受けさせたい、という希望があったので、彼と話をした上で、通塾の回数を間引くことにしたんです。週3のうち算数は毎回通って、国語を間引く。理科と社会は隔週で通う、という選択にしました。夏期講習も行かなかった。塾の先生が理解を示してくださる先生だったからよかったんですけどね。5年生の間は一般生の半分ぐらいしか通っていないんじゃないかな。もちろん、平常の授業料は全額払います。公開模試も試合で受けられない時がほとんどでした。小6から私が指導に入り、夏の間は頑張って夏期講習と野球を両立させて結局、6年秋の引退試合まで続けましたね。それから勉強1本にして無事、第一志望に合格しました。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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