■「塾はいいかな」という言葉の背景

矢萩:なるほど。このご相談者さんの場合、塾をやめるか、続けるか、0か100か、の話になってしまっているのがちょっとよくないような気がしますね。お子さんの「塾はいいかな」というのも、いろいろな言葉が省略されてしまっているような気がします。多分、塾がつまらない、やっていて意味を感じられない、ピンとこない、といった感覚なんだと思いますが……つまり、続けていくことにプラスの要素が見出せないんですね。もし、「この学校に行きたい」ということがあればそれはプラス要素にはなるけど、それもあまりない。

安浪:そうですね。このご相談の内容から見ると、親御さんの中にもなぜ受験を選ぶという強い意識は感じられないですね。

矢萩:まず前提として、「もったいない」というのであれば、今まで続けてきた野球をやめてしまうことだってもったいない、となります。もし息子さん自身が、小4から今まで野球と塾を両立してやってきたけれど、最後は野球に振り切りたい、って判断をしたのであれば、それはありだと思います。ただ、その場合にちゃんと情報を与えることが大事です。ここで受験勉強をやっておくとこういうメリットがあるかもしれないよ、今は気づいていないけれど、続けるとこういったいいところがあるよ、だとか。

安浪:そうですね。親子でもう一度話し合って、目的をはっきりさせることは大事です。志望校に学力と大きな乖離があるならばそう悠長なことは言っていられないかもしれないですけど、そうでないのであれば、いくらでもやりようはあると思うのです。

矢萩:続けるの?やめるの?という二元論的な話し合いではなく、例えば、2科目受験も視野に入れてみるとか。基本的な算数力と国語力で戦える学校は結構あります。その力をつけることは将来にも役立つことだし。勉強以外で頑張ってきたものがあるのなら、それをプラス要素として判断してくれる新型入試をやっている学校を考えてもいいかもしれない。そうやって志望校から考え直してみるのもいいかもしれないです。それに模擬試験だって当日受けられないのであれば、後日家でやってみて親御さんが採点して手作りで成績表を作る、っていう方法だってありますよね。

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