「ロシア軍は長期戦、ゲリラ戦となる可能性を視野に入れて、戦闘を重ねてきたシリアからのプロの傭兵を4万人くらい連れてきて、最前線に投入すると言われています。もしそうなった場合は、アフガニスタン戦争と同様な構図となっていく可能性はあるでしょう」

 一方、険しい山岳地帯のアフガニスタンに対して、ウクライナは平たん地と、軍事作戦の遂行に大きく影響する地形はかなり異なる。

「つまり、空の上から全部、見えてしまうわけです」

 昨秋からアメリカは、ウクライナ国境に張り付いていたロシア軍の動きを偵察衛星で詳細に監視。かなり早い段階から「侵攻の可能性は高い」と、国際社会に対して警告を発してきた。

「たぶん、その情報をウクライナ側と共有していると思います。どのルートで侵攻して、どこに隠れるか、あらかじめ想定していたでしょう。山岳地帯での戦闘では相手の動きが十分読めませんが、ウクライナでは、戦車が森の中に隠れていてもわかります。それに向けて地対空・対戦車ミサイルやドローン兵器を効果的に使う」

■ロシア軍内部で漂う厭戦気分

 ロシア軍の陸上兵力は約33万人(2021年)。世界有数の陸軍国だが、兵頭部長によると、「もう正規軍だけでは、このミッションを完遂することは難しくなってきている」と言う。

「これもロシアにとっては想定外だったと思います。ロシア政府は戦死者を数百人と発表していますが、実際にはすでに数千人に達しているでしょう」

 欧米メディアによれば、ロシア軍が7000人死亡した可能性があることを報じている。アフガン侵攻によるソ連の戦死者は10年間で約1万5000人だったことと比較すると、今回の侵攻でのロシアの損害がいかに甚大かが分かる。兵頭部長によれば、ロシア軍内部ではすでに厭戦気分が漂っているにちがいないという。

「昨年秋から演習に参加するつもりでやって来た部隊がもう何カ月も作戦行動を続けています。遠く極東方面から移動してきた部隊もある。徴兵された人もかなり入っている。しかも、同じスラブ民族であるウクライナ人に銃口を向けるわけです。正規軍にはなかなかできないことで、攻撃を躊躇してしまう。戦闘が激化すればするほど、士気は下がる。それをテコ入れしようと、ロシアはシリアのアサド政権の民兵みたいな人たちをリクルートして最前線に送り込もうとしているわけです」

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