ライブパフォーマンス中のT-BOLAN
ライブパフォーマンス中のT-BOLAN

俺も釣りが好きだったから、LINEで「こんなの釣れたよ」と釣った魚の写真を見せ合う関係から始まって、そのうちに一緒に釣りに行く仲間になった。釣りで仲良くなったものだから、いつの間にか、俺の中でアインシュタインではなく、“釣り仲間のマーク”になっていたわけ。すっかりアインシュタインの末裔だということを忘れていた。

 今回のアルバムのジャケットでアインシュタインの有名な舌出し写真を再現したくて、別の人の顔を使って写真の候補を何枚か作ったんだけど、その最中に、「ん?ちょっと待てよ……」と。友達にアインシュタインの血族で、笑うとそっくりな“アインシュタイン”がいるって気づいた(笑)。

――パンデミック下で作られた今回のアルバム。この期間はツアーの中止など、思うように活動できなかったと思いますが、自分と向き合う時間にどんなことを考えていましたか。

 「エンタテイメントを止めることでいいのだろうか」と考えてた。感染対策としてはわかるんだけど、止めれば楽しみや喜びが全部奪われてしまう。人って喜びが奪われると、他人を思いやれる心が減っていく。自身がハッピーじゃなかったら誰かになにかを与えることができなくなるし、究極にいったら、争いしか残らなくなる。止めることでウイルスを遠ざけるけど、人と人とが争う世界が生まれて、それでいいの?と。「喜びを止めたらだめだな、でもどうしたらいいんだろう」とすごく考えたよ。

 だから、このアルバムに込められた愛のメッセージを多くの人に届けたい。90年代にヒット曲を出していた頃の自分達の発信力が、今欲しいなって思うよ。俺に財産がいっぱいあったら、100万枚買い取って皆に配りたい、そんな気持ちだね(笑)。1枚でもT-BOLANのアルバムに触れたことのある人なら、聴けばきっと喜んでもらえるはず。新しいT-BOLANを感じてもらえたらうれしい。

(構成/AERA dot.編集部・飯塚大和)