残念ながらそのような姿勢は、2016年に日弁連が出した「性犯罪の罰則整備に関する意見書」にも見られる。2017年の性犯罪刑法改正に向け、監護者による性交等罪の新設に日弁連が条件をつけろと注文を出したのだ。その理由がこれだ。

「13歳以上の者は性交の意味を理解することが可能であるから、相手方が監護者であるからといって直ちに真摯な同意がないとみなすことはできない」

 つまり、13歳の女の子だったら父親との真摯な同意も可能でしょ、自由意思で行う性交を国家が処罰しちゃいけませんよ、と弁護士たちが公的な文書に残したのである。もちろん小さな子どもにも、明確な意思はあるでしょうよ。だからこそ、「子どもの自由意思を尊重しろ」という立ち場に立った上での、「成人男性と子どもの恋愛を罰するな」という理屈に言葉を失うのだ。本多議員も決してロリコンを代弁したのではなく、性的自己決定・性的自由意志派として発言をしたはずだ。ただ彼らの言う「自由意思」「自己決定」とは、殴られなかったから、怒鳴られなかったから、脅されなかったから、自らベッドに入ってきたから、自らすすんで下着を脱いだから、そこには自由意思があったのだろう……というような程度の上っ面の自由意思・自己決定であることが問題なのだ。

 親戚の男からの性虐待を14歳から受け続けていた女性がいる。男は彼女を自分の部屋に招きAVを見せ、まねをしてみないか?と楽しげな雰囲気で提案する。驚いて黙っていると、下着の中に手を入れられ性器を触られた。あまりに怖くて硬直していると、お父さんやお母さんには絶対に内緒だよ、言ったら大変なことになるからね?と“優しく”脅される。その日から彼女は男に定期的に呼ばれるようになる。次第に、少女は「早く終わらせたくて」自ら服を脱ぎ行為に積極的に参加するようになる。全ては「この時間を終わらせるため」である。彼女は摂食障害を患い、通学もままならなくなり、人生を中断させられ、今も苦しみの中にいる。だけれど男を訴えることはできない。なぜならとっくに公訴時効になっているから。そしておそらく訴えられたとしても、リベラルな議員や弁護士たちの言う自由意思・自己決定論に沿えば、彼女が自ら男の家を訪ね、彼女が自ら男の部屋のドアを開け、彼女が自ら服を脱いだことをもって「自由意思」があったとされてしまうだろう。14歳? 性的なことを理解していましたよね? 真摯な同意がなかったとは言えないですよね? 被害者から見れば、あれは自由意思が侵害された性暴力だったのに。だからこそ「積極的」に終わらせようとしたのに。それでも加害者からは「同意があった、恋愛だった」と言われてしまうリスクは、今の刑法では非常に高い。

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立憲民主党が見ようとしなかったもの