中学受験本番まで、親子仲良く足並み揃えて完走できればベストですが、途中で喧嘩をしたり、うまくサポートできなかったり、さらには子どもに拒否までされたりと、山や谷ばかりの道のりに、心折れそうな親も多いようです。「受験期だからこそ、親子は適切な距離を保つ必要がある」と話すのはプロ家庭教師「名門指導会」代表・塾ソムリエである西村則康先生。ケースごとにアドバイスを伺いました。

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■「鉄道研究部がないところはイヤ!」子どもの意見に振り回されて…

 小さい頃から、何をするにも我が子の声に耳を傾けてきたAさん。中学受験も「子どもがやりたい」と言い出したことがきっかけで始めたといいます。

 志望校を決める際も、「男子校がいい」「T中学の雰囲気は好きだけど、Y学校はあまり好きじゃない」「鉄道研究部がないところには行かない!」と好みがはっきりしていたため、意見に忠実に学校を探しました。

「でも本番では、希望校にことごとく落ちてしまったんです。日程的に受けられる男子校がなくなってしまい、結局、共学校にご縁をいただくことになりました。嫌だと言っていた共学校、さらにはその学校には鉄道研究部はない……。息子のイメージとかけ離れた学校に、馴染めるかとても不安でした」(Aさん)

 けれども現在、中学2年の息子さんは、共学であることを楽しみ、「男子校じゃなくてよかった!」と言うほどに。部活も鉄道研究部とは毛色の違う軽音楽部に入り、「違う趣味を見つけた」と没頭しているといいます。

「小学生の、その時点の意見を真に受けて、振り回されすぎたようです。親の意見をしっかりと持てばよかったと思う」と、今は感じるそう。

 もし、選択肢を男子校だけに狭めなければ、鉄道研究会がある学校にこだわらなければ、もっと受験校の幅を広げられたのに……と心残りも否めませんが、現在、子どもが楽しく通えていることが救いのようです。

「志望校選びは、基本的には親の方針を先に立てるべきでしょう。そこを逸脱しない範囲で子どもの意見を取り入れていくのがベスト」と西村先生は提案します。

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鶴島よしみ
スローマリッジ取材班 鶴島よしみ

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