こうした実態を受け、患者団体の「筋痛性脳脊髄炎の会」は、COVID-19後の体調不良(後遺症)が続いている人がME/CFSを発症する可能性を調べるため、20年5月31日~8月31日にインターネット調査を実施し、326人から有効回答数を得た。検査数抑制のためにPCR検査を受けられなかった人や陰性となった人も調査対象とした。その調査では、40.5%(132人)が「仕事(学校)に戻ることができない」と回答し、11.3%(37人)が「身の回りのことができない」、12.6%(41人)が「寝たきりに近い」、3.7%(12人)が「基本的動作(飲み込みや歩くなど)を学習する必要がある」と答えた。その後、専門医の診察や検査を経て、5人(陽性1人、未検査4人)がME/CFSの確定診断を受けた。また、ME/CFSの症状を呈した人は全体の27.9%(91人)だった。PCR検査陽性の人が6人(陽性患者全体の22.2%)、陰性が26人(陰性患者全体の31.7%)で、未検査が59人(未検査患者全体の27.2%)という結果だった。

 同団体の理事長を務める篠原三恵子さんは、調査結果についてこう話す。

「日本においても、新型コロナ感染後にME/CFSを発症した人が確認されました。さらに、多くの人がこれまでの生活を送れなくなった実態が浮かび上がってきたのです。私たちが一番心配をしているのは、20年1月から5月あたりのPCR検査が抑制されていた時期に、PCR検査を受けられなかった人たちが後遺症に苦しんでいることです。新型コロナに感染してもPCR検査すら受けられなかった方たちは、治療の面でも精神的な面といった違う意味で、より困難な状況に追いやられています。こうした問題を解決するためには、PCR検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、今からでも検査体制の拡充が大切ではないでしょうか」

 20年1月18日、聖マリアンナ医科大学は新型コロナウイルスの後遺症についての専門外来を開設した。各病院による専門外来の開設が続く中、厚生労働省は同年8月から21年3月までの予定で、実態調査に乗り出している。国による調査・研究結果が出ない一方で、後遺症についての不安が続く。(板垣聡旨)