いまテレビは誰の味方なのか? 異色のドキュメント「さよならテレビ」 (1/5) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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いまテレビは誰の味方なのか? 異色のドキュメント「さよならテレビ」

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朝山実dot.
映画「さよならテレビ」は東京・ポレポレ東中野、名古屋シネマテークにて1月2日より公開 (C)東海テレビ放送

映画「さよならテレビ」は東京・ポレポレ東中野、名古屋シネマテークにて1月2日より公開 (C)東海テレビ放送

プロデューサーの阿武野勝彦さん(撮影/写真部・小黒冴夏)

プロデューサーの阿武野勝彦さん(撮影/写真部・小黒冴夏)

監督の土方宏史さん(撮影/写真部・小黒冴夏)

監督の土方宏史さん(撮影/写真部・小黒冴夏)

ディレクターとして取材中のワタナベくん (C)東海テレビ放送

ディレクターとして取材中のワタナベくん (C)東海テレビ放送

「ヤクザと憲法」(2016年)や「人生フルーツ」(2017年)など、テレビ発のドキュメンタリー映画で異例の快進撃をつづける東海テレビの最新作「さよならテレビ」が来春1月2日から東京、名古屋で劇場公開される。これまでにない自社の報道フロアにカメラを向け、二年近くを費やした。テレビ放映後にコピーされた海賊版DVDが出回るなど反響の大きかった異色作だ。

【画像】こちらも話題になった映画「ヤクザと憲法」

*  *  *
「(番組の放映)で東海テレビのイメージを著しく毀損したという批判を受ける可能性がありました。そのときには責任をとって退職しようと考えていました」

 と語るのは、過去11作の「ドキュメンタリー劇場」の全てに関わってきたプロデューサーの阿武野勝彦さん(60)。

 この映画の傑出したポイントは、「働き方改革」をめぐる番組をつくるのに編集マンが深夜残業しないといけない皮肉な光景や、「非正規」雇用のスタッフに支えられるテレビの現況が詳らかに描き出されていることだ。

「日本のいまの労働環境はこういう状態ですよねという。テレビもほかの企業と大差はないということも伝えたかった」と阿武野さんはいう。

 撮影初日に趣旨を伝えるやフロアはざわめく。二ヶ月間の冷却期間を置いての再開となるのだが、その間「ほぼ放置」にちかい黙視をまもった阿武野さんは、完成作品のある場面で涙ぐんだという。

 それは、映画の中でキーマンとなる三人のひとり、20代の派遣社員に関するものだ。要領が悪くミスを連発するワタナベくんは常に白い歯を覗かせ、ピンチを笑顔でやり過ごそうとし、おどおどしている。その彼をカメラは追う。試写を観ていたとき、筆者は何度ため息をつき舌打ちしたことか。「早く別の仕事を考えたほうがいい」と。しかし、後半彼が「卒業」となり花束を渡される場面で、もやっとなる。卒業とは、つまり更新の契約をしないということだ。映画はさらにラストちかくで「その後」の彼を映し出す。

■ミスをするたびに叱ら萎縮する派遣社員

 阿武野「彼は、いまテレビ大阪にいるんですよ」

──名古屋ではびくびくしながら仕事をしていた彼が、同様の取材なのにリラックスして、笑顔も自然だったのを見たとき涙があふれて。試写で泣くなんてありえないことだったので、自分でもびっくりしたんです。

阿武野「いゃあ、ぼくも実はあそこで泣きました。息子がね、まぁあんな感じです。ナベちゃんよりも年上で今年35になりましたけど、なんというか上手に生きていけない。派遣労働で、人間関係とかでけっこう苦しんでいる。映画を観るとき、息子が頭から離れなくて考えてしまう。そうすると、つい……」


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