夫の死を越え、遺志継いで書いた小説で涙の受賞「及第点もらえたと報告できます」【司馬遼太郎賞】 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

夫の死を越え、遺志継いで書いた小説で涙の受賞「及第点もらえたと報告できます」【司馬遼太郎賞】

このエントリーをはてなブックマークに追加
西岡千史dot.
司馬遼太郎賞を受賞した堀川惠子さん=(c)朝日新聞社、2017年撮影

司馬遼太郎賞を受賞した堀川惠子さん=(c)朝日新聞社、2017年撮影

狼の義 新 犬養木堂伝

林 新,堀川 惠子

4041066433

amazonamazon.co.jp

 第23回司馬遼太郎賞(司馬遼太郎記念財団主催)は4日、元NHKプロデューサーの林新さんとノンフィクション作家の堀川恵子さん(50)による共作の小説『狼の義 新 犬養木堂伝』(KADOKAWA)に決まった。賞金は100万円。

 受賞作は、1932年の5.15事件で殺害された犬養毅の生涯を描いた小説。2017年に亡くなった林さんが生前に執筆していたテーマを、妻の堀川さんが引き継いで完成させた。

* * *
「受賞と聞いて、落涙してしまいました」

 堀川さんは受賞発表後の電話インタビューで、こう話した。実力派のノンフィクション作家として知られる堀川さんは、これまで講談社ノンフィクション賞や大宅壮一ノンフィクション賞など、数々の受賞歴がある。それでも今回の受賞の喜びはひとしおだった。

 受賞作は林さんがライフワークにしていたテーマで執筆を進めていたが、2017年に病気で断念。亡くなる数カ月前に、病院のICU(集中治療室)で堀川さんが「仕事は引き継ぐから」と話した。その時に林さんは何も言わなかったが、亡くなる約1週間前、知人に「小説は恵子がやってくれるから」と話していたという。

 夫の死後、林さんが集めた取材資料の読み込みや追加取材を続けながらも、明治の政治は複雑に入り組んでいて、執筆は悪戦苦闘が続いた。そのなかで、犬養を生涯にわたって支えた新聞記者で後に衆院議員になった古島一雄を狂言回しにする着想を得て、物語を展開させる手法を選んだ。審査委員の柳田邦男さんは「綿密な取材に基づきながらも、読者にわかりやすくするために小説にし、それが結果的に有効だった」と評価する。

 2009年夏、林さんと堀川さんは海を見ながら語り合ったことがあった。その時は、林さんが明治時代の日本に立憲政治のレールを敷いた政治家達のすごさを熱く語っていたという。今でも林さんのことを「最も尊敬するジャーナリスト」と慕う堀川さん。涙を流した理由について「(作品を引き継いでから)死にもの狂いで書きましたが、賞をもらえたことで、夫に『及第点をもらえた』と報告できます」と語った。

 司馬遼太郎賞の贈賞式は2月14日、東京都千代田区のよみうりホールで開かれる。(AERA dot.編集部・西岡千史)


トップにもどる dot.オリジナル記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい