■地方のため、地方に住む人たちのための施策でなければいけない

 絶メシリストはその後、「Web Grand Prix 2018」「PR Award Grand Prix 2018」など、ACC以外の広告賞も複数受賞。また福岡県柳川市、石川県などが独自の絶メシリストを公開するなど、他自治体へも波及している。前出の大手広告代理店社員も「こんな“横展開”をみせるシティプロモーションは過去にはなかった」と評価する。

 このプロジェクトの仕掛人である博報堂ケトルのクリエイティブディレクター・畑中翔太氏はこうした世間の反応・評価について、「やはり共感性が高く、あらゆる地域に共通する課題に向き合ったからではないか」と分析する。

「まず高崎市から与えられたお題は『高崎のグルメを盛り上げてほしい』というものでした。正直、札幌や福岡のような全国区のグルメ王国とは言えない高崎市のグルメを、どうやって盛り上げればいいのか悩みました(苦笑)。で、悩みつつも市内の飲食店巡り、市民の方々に聞き取りをすると、みなさん口を揃えて『昔はいい店があったんだけどね』『いい店がどんどんなくなってるんだよ』と言うわけです。実際に、町中心部のアーケード街もシャッター通りになっていて、人は郊外の大型モールに集まっていて町が空洞化している。昔ながらの大衆食堂なんかもどんどんなくなっていて、チェーン店ばかりに行くようになっている。言い方は悪いですが、自らの行動で招いていることだけど、みなさん“被害者”のようにその状況を嘆いているわけです。矛盾しているように見えますけど、これって日本のあらゆる都市に共通して起きている現象じゃないですか。この部分……つまりローカルに共通する課題にフォーカスして、本当に大切なものがなにかを気づいてもらい、そしてそれを守るために自分たちができること(=店に行って、たくさん食べるという実行動)をしてほしい。そういうことを思いつつ、企画を形にしていきました。それが、こうやって多くの方に喜ばれ、また『本質的だね』と評価されたことは本当にうれしい限りです」

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目指したのは広告換算に表せない、本質的な効果