恐竜化石というとアメリカや中国を思い浮かべがちだが、日本でも重要な化石が次々と見つかっている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、昨年度、過去最多の化石が見つかった福井県勝山市の最新事情をお伝えしよう!

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 日本列島で初めて恐竜の化石が見つかったのは1978年(※注1)。その後、全国19の道と県で化石が見つかり、これまでに7種の恐竜に学名がつけられている。そのうち5種が福井県勝山市の白亜紀前期の地層「手取層群北谷層」(約1億2千万年前)から見つかっている。

 北谷層での本格的な調査は89年から始まり、新種の5種のほか、まだ特定されていない多数の恐竜化石や、カメ、ワニ、哺乳類、鳥の化石も見つかっている。さらに昨年8、9月に行われた調査で、草食恐竜フクイサウルスとみられるイグアノドンの仲間の骨など、脊椎動物(※注2)の化石3386点が発掘された。単年度で過去最多。このうち恐竜化石は116点で、もっと増える可能性もある。

 北谷層の発掘現場は、川に面した崖だ。硬い岩石でできた地層を区切り、重機を使って層を一枚ずつはがして発掘が行われる。採取した岩石はハンマーで砕き、中に化石がないか、慎重にていねいに探し出す。昨年の調査では広さ約100・、厚さ約1メートルの地層を調査し、5メートル×5メートルの範囲を中心に3千点以上の化石を見つけた。発掘チームは、“化石のたまり場”を探し当てたのだ。

 1億2千万年前、北陸地方は今の位置にはなく、アジア大陸の東の端の一部だった。北谷層はくねくねした川とそのまわりに土砂が積もってできた地層だ。そこには洪水が起こると上流から恐竜やその他の生物の死骸が運ばれてきた。死骸はやがて土砂に埋まり、長い年月を経て化石になった。たまり場は、川の中でもとくに動物の死骸が集まりやすい場所だったのだろう。

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上浪春海
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