■進化のナゾを解くカギが眠る

 化石のたまり場と聞くと、さらに発掘を進めることで、ティラノサウルスのような巨大な恐竜の全身骨格が見つかるのでは?と胸が躍るが、期待していいのだろうか。北谷層の発掘調査を続けてきた福井県立恐竜博物館研究員の柴田正輝さんに聞いてみた。

「北アメリカや中国などでは保存状態のよい全身骨格がよく出ますが、北谷層は生き物の死骸が掃き寄せられている場所なので、骨がつながった状態で発見されることは少ないです。でも、そのぶんいろいろな種類の化石が見つかります。今回、イグアノドンの仲間が見つかったと発表しましたが、獣脚類(※3)や竜脚類(※4)の化石も新たに発掘されました。もっとよく調べれば、その中に未発見の種が混じっているかもしれません。今年の夏も継続して発掘を行うので、新種の恐竜や保存状態のよい恐竜化石を発見できる可能性があります」

 ティラノサウルスやトリケラトプスに代表される白亜紀後期(1億~6600万年前)の恐竜化石は、世界で数多く発見されている。一方、白亜紀前期(1億4500万年~1億年前)については、恐竜化石の発見はまだ少ない。そのため、体の一部であっても多様な化石が出る北谷層は、恐竜がどのように進化し、多様化していったのかを探るうえで、非常に重要なのだと柴田さんは言う。

■最初の発見者は中学生

 1982年、主に北陸地方に分布する手取層群で最初の恐竜化石となる、肉食恐竜の歯を発見したのは、当時、中学生の松田亜規さんだった。この発見が大きな転機となって、北谷層にも恐竜化石があることがわかり、数多くの発見につながったのだ。キミにも大発見のチャンスはあるかもしれない!(サイエンスライター・上浪春海)

※注1)岩手県岩泉町で、恐竜のものとみられる上腕骨の化石が見つかった。
※注2)脊椎動物=魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など、背骨のある動物。
※注3)獣脚類=後ろ脚で二足歩行する恐竜。多くは肉食。
※注4)竜脚類=巨大な体と、長い首と尾を持ち、四足歩行する恐竜。草食。

※月刊ジュニアエラ 2017年6月号より

ジュニアエラ 2017年 06 月号 [雑誌]

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上浪春海
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