まず重宝されるのが、食品の取り扱いだ。同法人のスタッフは「お皿にラップを巻けば、洗わなくても何度でも使えるし、避難所の配給で出た食品の保存に使える。手が衛生的でなくても、ラップを巻けば、食材をつかんだり、おにぎりを作ったりできる」と話す。

 他には、防寒だ。「新聞紙を体に直接巻き、その上からラップを巻けば暖かい空気がこもる」という。けがの応急手当てにも使える。皮膚が弱い人にはお勧めしにくいが、「切り傷やすり傷を水で洗い流した後、ラップを巻くと傷口を保護できる」というのだ。もちろん、医療機関を受診できるのなら、それにこしたことはない。

 さらに調べてみると、「長く伸ばしてねじるとひも代わり、編み込んで強度を増すとロープに代用できる」「油性ペンで字を書けば伝言を残せる、ガラスなどに張り付けることもできる」「使用済みのラップはくしゃくしゃにすれば体や食器を洗うスポンジになるし、排せつ物を包んで埋められる」といった活用法があった。密閉性があり、形を変えやすいラップはいろいろな使い道があるのだ。

 旭化成ホームプロダクツのサイトによると、ラップはもともと、1900年代にアメリカで軍事用に開発された。野営する兵士が蚊から身を守るための蚊帳や、ジャングルの行軍で水虫を防止するための靴の中敷きなどに使われていたという。戦後はチーズの包装に用いられ、1940年代後半、フィルムメーカーで働く技術者の妻が、フィルムでレタスを包んでピクニックに持参したことをきっかけに、食品用ラップの開発が進んだという。

 荒野で戦う兵士のために作られたフィルムが、時を経て災害時に役立つというのは、納得がいく話だ。どのような使い方にせよ、多くの人に役立ててほしい。

(ライター・南文枝)