マザー・テレサの名言から描かれたイラスト
マザー・テレサの名言から描かれたイラスト
愛知県の「愛」が「受」になった田辺“画伯”の作品
愛知県の「愛」が「受」になった田辺“画伯”の作品
田辺が選んだゲーテの名言
田辺が選んだゲーテの名言
水野が選んだ松下幸之助の名言
水野が選んだ松下幸之助の名言

「もし過(あやま)ちを犯すことになるのだとしても、それは、愛が原因であることを望みます」

 この言葉は、病める人々や貧困者を救済するために惜しみない愛をもって社会福祉事業に尽力した修道女、マザー・テレサの名言だ。テレサはその功績から、来年2016年にカトリック教会の最高位である「聖人」に認定されるといわれている。

 テレサが残した数ある名言から、冒頭の言葉を「彼女の生き様そのものを表す最高の一言」と語るのは、『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)などで知られるベストセラー作家の水野敬也だ。近刊書籍『偉人たちの最高の名言に田辺画伯が絵を描いた。』(朝日新聞出版)の中で、NHK紅白のシンボルマークのデザインでも話題となった"画伯"田辺誠一の絵とともに、このテレサの名言が紹介されている。この本は、水野が厳選した「偉人たちの最高の一言」を田辺がオリジナルに解釈してイラスト化した作品が添えられた名言集だ。

 テレサの名言に添えられた田辺画伯のイラストは、テーブルの上にある魚を凝視するネコの絵だ。病に伏す大切な人(ネコ)のために、魚をとるという「過ち」を犯してでも魚を届けるかどうか逡巡する様子が描かれている。

 実は、この名言を解釈したイラストはもう1点描かれた。それが「受知県」のイラスト。通常であれば「愛知県」と記されるところを「愛」を「受」と間違えている、つまり愛が原因でミスを犯しているという奇才ならではの解釈だ。

 このイラストは残念ながら本書には収録されなかったが、田辺はこのように、1つの名言をあらゆる角度から解釈して、いくつもの絵を描き上げた。掲載イラストは50あるが、実際に描いたのは100以上。一見すると、名言にゆるい絵が添えられているだけに見えるが、1年以上かけて名言と向き合った末に生み出されたこれらの作品には、じわじわと人の心を動かす何かがある。

 今年1年間、数多の名言に触れてきた田辺と水野に、多忙を極める年末年始に自身に響く名言について聞いてみた。

 田辺が選んだのは、ドイツの詩人であり劇作家ゲーテのこの一言だ。

「毎日を生きなさい。今日、自分の人生が始まったかのように」

『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』などを著したドイツを代表する作家ゲーテは、自分の作品に対して様々な批判がきても、「私も人間である以上、人間としての欠点や弱点は持っているから、書いたものにもそれが現れざるを得ない」と言って、過去の作品に執着することはなかったという。常に次の作品に目を向けていたゲーテの姿勢がこの一言に集約されている。

「1年の始まりにあたり、新しい気分で物事を始めるのにぴったりの名言ではないかと思います」(田辺誠一)

 水野が選んだのは、松下電器(現パナソニック)の創業者、松下幸之助が残したこの言葉。

「青春とは心の若さである。信念と希望にあふれ、勇気にみちて日に新たな活動をつづけるかぎり、青春は永遠にその人のものである」

 幸之助が座右の銘としていたこの言葉を選んだ理由について、水野はこう語る。

「自分では自由に発想しているつもりでも、『大人な発想』や『無難な考え方』というのはいつのまにか忍び寄ってきて無意識の中に居座ってしまうことがあります。年末年始は実家に帰る時期でもあるので、昔を振り返りながら、制約のない自由な発想とは何か?を改めて考えてみたいと思います」(水野敬也)

 長い月日を経ても今なお残るこうした言葉は、いろいろな角度から私たちを勇気づけ、背中を押してくれる。

 本書に掲載されている20の名言が、現在ニュースサイト「dot.」で期間限定特別公開中だ。今年一年を振り返りながら、自分自身に贈るベスト名言を探してみてはいかがだろうか?