そのような場面に対処するには「状況を要約する力」が必要です。そのような「嫌な相手」に理屈で相手をしていても発展性がありません。まともにつき合っても消耗するだけですから、たとえば「サルがサル山でほえているだけだ」と状況を要約してしまって、適当にやり過ごすことも一つの方法です。嫌な相手でも、このような形で「要約」できてしまうと、意外と腹も立たないものです。  

 では、そのような「要約力」をつけるにはどうすればいいのだろうか? 引き続き山本先生に聞いてみた。

――結局、自分でまとめるトレーニングを続けることです。ビジネス文書でも、小説でもなんでも、長いものを短くまとめる訓練をすることによって、その力は養成できます。
もちろん、会話であっても同様です。相手が言いたいことは何なのか、まとめながら聞いてみてください。そうすると、聞き上手になれるだけでなく、ご自分の話す力も上がっていくものです。

 具体的には、新聞の記事でも、小説でもなんでもいいので、まず一言でまとめる訓練をすること。それができたら、同じものを少し詳しくして、3つのセンテンスでまとめる訓練をしてみましょう。この作業をクセにしておくと、相当な力がついてくるはずです。

 私の専門は文学ですが、要約は自分でテキストを理解するのにとても有効な作業です。たとえば、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は文庫版で計2500ページにも及ぶ大作ですが、これを要約しようとするときに大切なことは、「どこを切り捨てていくか」です。中心の筋は何かを考え、これだけははずしてはいけないテーマとストーリーを追っていく作業をします。

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