そしてもう1点、高い決定力を誇る本田だけに、ゴールの近くでプレーさせたいという狙いも指揮官にはあるだろう。これまで中盤の選手でありながら72試合に出場して29ゴールは、FW岡崎慎司の44ゴール(92試合)に次ぐ高い得点率だ。

 このポジション変更とハリルホジッチ監督の要求に対し、本田自身も「まず自分の良さ、自分が認識している自分の良さの枠を超えようという作業をしている段階なので、何でもやってみようという感じです。新しい良さができればいいかな」と前向きにとらえ、新たなトライに取り組んでいる。どんなストライカー像になるのかはまだ漠然としていて、「それを監督は考えているんでしょうけど、目標としては裏への飛び出しとか、新たな動き出しとかになると思うんですよ」と答えるにとどまった。

 シンガポール戦(6月16日開催)の3日前に29歳の誕生日を迎えた本田。今日の試合で区切りとなる30ゴールでバースデーに華を添えることができるか。「ホームは全部勝つ。1点でも多く取る。時の流れの早さが怖いので、1秒たりとも無駄にできない。若い時に感じた成り上がり精神を捨てずに、何が何でも勝つんだというのを向上させたい」。勝利とゴールにこだわる気持ちに、いささかの衰えもない。

サッカージャーナリスト・六川亨)