●ダイエット甘味料が抱える5つの問題

 だとすれば、なぜ砂糖をダイエット甘味料に変えることによってカロリー摂取量、体脂肪、メタボ症候群が減るのかどうかわからないのだろう[2]? 実は、私たちの無知の根底には、5つの問題が潜んでいるのだ[3]。

問題1 体に与える影響がまったくわからない

 まず、薬物動態学と薬力学は同じではない、ということがある。簡単に言うと、薬物動態学とは、あなたの体が薬物にすることを調べる学問で、薬力学は、薬物があなたの体にすることを調べる学問だ。この2つは同じものではないどころか、はなはだしく異なる。

 すべてのダイエット甘味料の薬物動態学データは、安全性を確かめるために入手可能だ。というのも、そうした商品をアメリカの市場で売るには、米国食品医薬品局にデータを提出して、認可をとりつけなければならないからだ。

 しかし、薬力学データはない。こうしたダイエット甘味料が、長期的な食物摂取、体重、体脂肪、代謝状態にどんな影響を与えるかについては、まったくわからないのだ。その理由は、米国食品医薬品局が薬力学的研究を要求しないからである。

 米国食品医薬品局が薬品(甘味料を含む)の認可を下すときには、2つのことしか調べない。安全性と効果だ。そのため、食品業界は薬力学研究を行わない。高くつくし、場合によっては、その結果が販売に悪影響をおよぼすことさえ考えられるからだ。さらには、米国国立衛生研究所(NIH)も、それをやるべきなのは食品業界だと言って、みずからやろうとはしない。

 こうして薬力学研究はまったく行われないままになる。体に吸収されなかった甘味料はどうなるのだろう? キシリトールやソルビトールといった糖アルコールは腸で吸収されない。だから、安全だろう? ああ、そうだ。ただし、大量に摂取すると、それらはひどい胃腸障害、腹部膨満感、そして下痢を引き起こす。

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脳や腸内細菌に与える影響は…