
私「あんたも年とったなぁ」
犬「あんたもや」
愛犬ナッチャン(写真)に目薬を差してやりながらこんな会話を続けている。
ナッチャンは15歳、私は75歳の、ともにおばあちゃんだ。去る2013年のこの欄で、「自己管理袋をくわえてお散歩」というタイトルで紹介されたナッチャンである。
あれから7年。ナッチャンも私も年齢を重ねた。
6コースあった散歩の道も、短い2コースを繰り返すだけになった。気の向かないほうに行こうとすると、ベターッと地面にはいつくばって動かなくなる。
そして、あのころは健気に自己管理袋こと自分の排泄物を入れる袋を自らくわえていたが、今はそんなことすっかり忘れている。
しかし、排泄物を処理している私のそばで、「いつもすまんなぁ」という顔をすることは変わらない。
実は、ナッチャンは徒歩10分ほどのところにある息子の家の犬で、私が散歩を頼まれている。私がその散歩のため、息子の家に着くまでの朝の時間(だいたい8時から10時の間)を、息子の家と隣家の間の細い通路のところで、じっと待っている。
でも、私の姿を見ると、なぜか待ってなんかいなかったよとばかり、すっと横を向くのだ。
忠犬ナッチャンのテレなのか、気づかいなのか……。
最近は体が乾燥するらしく、背中やおなかをゴイゴイとかいてやると、自分から横になり、気持ちよさそうにしっぽを振っている。
犬も私も、下りてゆく坂道を労り合いながら緩やかに過ごしていきたいと思っている。
[神生(じんせい)綾子さん/三重県/75歳/無職]
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