「飼い主に懐かない半野良犬モモ様」(8月22日号)を読んで、わが家のアルフォンス号の異母姉に違いないと思い、投稿する次第です。
 アル号は雄ですが、同じ野良で尾道市出身、極端な臆病ぶり、そして美貌。首の月の輪も血のつながりを示す紋章に見えます。
 アルは、わが家の3代目として昨年10月、動物愛護センターから引き取りました。候補の子犬の中でただ一匹、しっぽを振らず不安そうにしていましたが、スリムな体と賢そうな犬相にひかれ、妻が選んだのです。
「推定6カ月。ちょっとシャイですけどね~と職員。ところが連れ帰ってみると、「ちょっとシャイ」どころか、一向に懐きません。
 捕獲前によほどトラウマになるようなことがあったのか、人間、特に男性嫌い。庭に放すと塀際に身を寄せ、近づくと脱兎のごとき逃げ足で別の塀際にうずくまります。
 散歩などもってのほか。何とかリードをつけてアルを連れ出しても、路上で身を固くして足を踏ん張る。通りすがりの人に「どうしたんですか」と不審がられます。
 隣に住み、高価な肉をエサに初代、2代目を手なずけた老父母もお手上げです。
 狂犬病の注射のため車に押し込めば、脱糞、失禁……。せっかく付けたフランス貴族風の名前は「アルぽん助」に格下げされました。
 引き取って1年。妻と娘には何とか体に触れさせるものの、ご主人様の私には依然として近づきません。
 毎晩、アルとスキンシップを図っていますが、体は緊張したままです。それにしてもどんなトラウマだったのか、今更ながら不憫に思えます。
 いつかご主人様と仲良く散歩に行ける日は来るのか。せめて3年半後の定年の暁には相手になってもらいたいと願うこのごろです。

(田中伸武さん 広島県/57歳/会社員)

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