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第6回 おいしいものを食べる幸せ文・大谷由里子 |

新幹線で、わたしの後ろに50代の夫婦と思えるカップルが座っていた。
何気なくそのふたりの会話を聞いてしまった。
女性は、アーモンドチョコを食べていた。男性が言った。
男性「アーモンドチョコ好きだね」
女性「甘いもの食べていると、とっても幸せな気分になるじゃない」
男性「君の幸せは簡単だね」
女性「あなたも食べる?」
そんな会話を聞いていて、「なるほど」と思った。
たしかに、おいしいもの、好きなものを食べていると、心が満たされるかもしれない。
そう考えると、すぐにお腹がすいて、おいしいものを「おいしい」と感じて食べることができるわたしは、とっても幸せだと思った。
そして、何よりも、「おいしい」ものを「おいしい」と感じられる人は、それだけで幸せかも。
わたしの祖母は、いろんなことで苦労した人だった。
戦争、敗戦、貧乏、介護、家の没落などいろんな経験をした。
でも、わたしたち孫にそんな不満を言ったことなどなかった。
それよりも、「おいしいもの食べていると、嫌なことはみんな忘れるわ」と、いつも笑っていた。そんな祖母と祖父は、美味しいものに目がなかった。
「うなぎは、○○だよ」
「おまんじゅうは、△△の店だよ」
と、お取り寄せなどない時代にもかかわらず、遠くまで買いに行ったり、わたしたち兄弟をそこまで連れて行ってくれた。
ありがたいことにわたしたち兄弟は、そんな祖父母にいっぱいおいしいものを食べさせてもらった。
家でも、そんなにお金があるわけでもなかったのに、おいしいものを料理してくれた。
大家族だったけれど、ぶりを一匹なり買ってきて、お刺身、焼き、煮付けを作ってくれた。
「こうして、おいしいものを食べられるだけで、幸せだよね」
と、食事のたびにごきげんだった。
(更新 2015/3/17 )

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プロフィール
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大谷由里子(おおたに・ゆりこ) 1963年奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業に入社。故・横山やすし氏のマネージャーを務め、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなどを売りだし注目を集める。2003年、研修会社の志縁塾を設立。「笑い」を取り入れた「人材育成研修」は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題となっている。 現在は、年間300を超える講演・研修をプロデュース中。主な著書に『仕事で大事なルールは吉本興業で学んだ』(こう書房)、『はじめて講師を頼まれたら読む本』(中経出版)など多数。 |