「2014年に厚木市で白骨化した子どもの遺体が見つかった事件では、シングルファザーとして子育てをしていた父は会社でAランクの評価を受けていました。10年7月に大阪市西区で3歳と1歳の姉弟が亡くなった事件でも、母親は専業主婦時代に母乳で子育てようとしていたし、使い捨ての紙おむつではなく布おむつを使っていました。離婚などで『良い母』ができなくなったとき、追い詰められどんどん社会から隠れていきました。ネグレクトを含む虐待事件では食事が制限されるケースが多く、その背景に、自分の立場を守るために子どもを強くコントロールしたいという感情がある場合があります。雄大容疑者にとっては二度の書類送検で『お前はダメだ』と繰り返し突きつけられた感覚だったのでしょう」



 実際に、雄大容疑者が昨年12月まで勤めていた食品会社の関係者は「明るいキャラクターで、辞めると言ったときも引きとめた」と証言しているという。

「ひどい夫婦だと扇情的に騒ぎ立てることで、こういった人間の弱さを自分たちの問題として向き合い、どう解決していくかということから目をそらしている。それだけではなく、いままさに子育てがうまくいっていない親たちは罰せられることを恐れてさらに現状を隠そうとするでしょう。子どもを守るには、親が安心して子育てをする環境が不可欠です。親を優しく受け止めて、必要な時には、安心してSOSが出せるような、社会の目の中で子どもを育てていくことを考えていくべきです」(杉山さん)

 この事件を悲しみと怒りで終わらせずにどう向き合うのか。社会全体の子育てへの関わり方が問われている。(AERA dot.編集部・金城珠代)