かいぼり君の仕組みはこうだ。三つの口それぞれにホースをつなぎ、片方からポンプで水を流すと内部が真空状態になり、強い吸引力が生まれる。その力を利用して泥を吸い上げてかくはんし、川に流していく。重機が入れない場所でも使える大きさにし、地域の消防団などが保有する消防ポンプに対応させた。メンテナンスがしやすいよう、分解できる構造にしたのもポイントだ。

 かいぼり君は17年秋に完成、18年2月までに島内8カ所のため池で使ってみた。福井さんによると、初めはなかなか泥を吸い上げなかったが、設置する場所やホースの長さなどで試行錯誤を重ねた結果、現場の地形などに応じた最適な使い方が分かってきたという。

 福井さんは「現場状況に合わせて臨機応変に対応できるようにしたい」と話す。かいぼり君の商標登録は済ませたが、ある程度の知識や技能がないとうまく使えないため、現時点では商品化までは考えていないという。「吸える泥の量などのデータをある程度蓄積して分析し、改良を重ねていきたい」。

「長い間かいぼりをしていないと、池が決壊する可能性もある。防災面でも大切なかいぼりの役に立ちたい」と福井さん。依頼があれば、島外にもかいぼり君とともに出向いて協力するという。

 また、福井さんは、かいぼりの新たな可能性にも注目している。「かいぼりの現場には、農業者や漁業者だけでなく、大学の研究者や学生など、いろいろな人たちが集まるのですよ。かいぼり作業をしている隣で、カメの研究者や藻の研究者が調査していて、近くでは地元の人たちが炊き出しをしている。島を知ってもらうための体験型プログラムにできたらおもしろいのではないか」

 農業だけでなく、漁業や防災にも関係があり、さらには観光分野まで広がっていきそうなかいぼり。作業を裏方で支えるかいぼり君の今後にも期待したい。(ライター・南文枝)