卓球の平野美宇選手をはじめ、10代アスリートの活躍が目立っている。なぜなのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、スポーツジャーナリスト・生島淳さんの解説を紹介しよう。
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「ティーンエージャー・アスリート」の活躍が止まらない。
卓球では、17歳の平野美宇選手がアジア選手権でランキング1、2、5位の中国選手に3連勝して女王に。競泳では16歳の池江璃花子選手が、世界選手権代表選考会も兼ねた日本選手権で、女子選手としては初めてとなる5冠を達成。サッカーに目を転じると、FC東京に所属する15歳の久保建英選手が、J3の試合でJリーグ最年少ゴールを決め、5月にはトップチームでデビューする。
これだけ活躍できる理由はなんだろう? 要因として「世界志向」が挙げられる。
平野選手はリオデジャネイロ五輪に出場できず、そこからがぜん、ハングリー精神に火がついた。中国の超級(スーパーリーグ)に参戦し、一流選手との対戦が増えたことで経験値が大幅にアップ。5月29日にドイツで開幕する世界選手権では「向かっていって、勝てればいいかなと思います」。17歳の選手から「勝てれば」という言葉が出てくること自体、日本を超えたところで平野選手が戦っている証拠だ。
池江選手の場合は自由形、バタフライと、複数種目にエントリーするのが特徴。これまで日本では、素質があればあるほど、世界と戦うために得意とする種目に「専門化」することが多かった。しかし、池江選手は体力が続く限りエントリーする「アメリカ型」だ。日本のスイマーを手本とするのではなく、海外にモデルを求めていることが強さを生む要因になっている。
そして久保選手は、小学2年生のときにメッシ選手ら世界のスーパースターが活躍するFCバルセロナのキャンプに参加、MVPに選ばれた経験を持つ。その後はバルセロナの下部組織でプレーしていたが、15年にFC東京の下部組織に登録。中学生ながらJ3でもゴールをマークした。ここまで日本の常識では捉えきれない成長のスピードをみせているのである。
世紀の変わり目に生まれた選手たちは、日本のスポーツを変えようとしている。(解説/スポーツジャーナリスト・生島淳)
※月刊ジュニアエラ 2017年6月号より