今年は野球ファンにとって嬉しいニュースがあった。大リーグで活躍した田中将大選手が日本球界に復帰。東日本大震災から10年の東北に、そして日本じゅうに勇気と元気が届けられた。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」4月号の記事を紹介する。
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まさかのことが起きた。田中将大選手が楽天に戻ってきたのである。
大リーグの名門、ニューヨーク・ヤンキースでは7年間で78勝46敗。安定した成績を残していただけに、再契約が見込まれていたが、ヤンキースとの交渉は難航。球団の真意は読めないが、コロナ禍で収入が減少し、年俸を抑えたかったのかもしれない。メジャーの他球団も田中選手の獲得に動いたが、コロナ禍でシーズンの動静が不透明なこともあり、田中選手は古巣への復帰を決めた。
田中選手が記者会見で「アメリカでやり残したことがある」と話したのは、ワールドシリーズでの優勝を目指していただけに、それが達成できなかったことが悔やまれるのだろう。
田中選手復帰によって楽天の本拠、仙台は活気づいている。渡米前の2013年、田中選手は楽天のエースとしてレギュラーシーズンで24連勝、防御率1・27というとてつもない数字を残し、日本シリーズでも第7戦の9回のマウンドに上がり、楽天に初の日本一をもたらした。田中選手の功績は、甲子園のスターが順調に成長し、日本球界を代表するエースとなったことである。これほどのサクセスストーリーはなかなか生まれない。
そして東日本大震災から10年というタイミングでの復帰は、東北の人たちの「愛郷心」を再び呼び覚ますに違いない。
2月6日、キャンプに合流した田中選手は若手へのアドバイスも積極的に行っていた。石井一久監督も「田中君が持ち帰ってくれたものは、チームの財産になると思うんですよ」と話しており、チーム自体が上げ潮に乗っていくだろう。
さらに、パ・リーグのペナントレースも面白くなりそうだ。日本シリーズ4連覇中のソフトバンクが戦力的には充実しているが、楽天は今季、田中選手、涌井秀章選手、岸孝之選手、則本昂大選手ら先発陣の豪華なローテーションが組め、優勝争いに加わってくるのは間違いない。
田中選手とソフトバンクの柳田悠岐選手の対決を想像しただけでワクワクしてくる。田中選手の復帰は野球の面白さの再発見につながるはずだ。
(スポーツジャーナリスト・生島 淳)
※月刊ジュニアエラ 2021年4月号より