大家さんの2人に1人が、何らかのトラブルに巻き込まれていた(オーナーズ・スタイル提供)
大家さんの2人に1人が、何らかのトラブルに巻き込まれていた(オーナーズ・スタイル提供)
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 今やサラリーマンほど不安定な職業はないのではないだろうか。定期収入はあるものの、それだって保障はされていない。終身雇用は幻となり、過度な能力主義によって、いつクビになるかもしれない。年金もあてにならない今、家賃収入で暮らせる大家業は、多くのサラリーマンにとってあこがれの職業だ。

 しかし、どんな職業にも落とし穴がある。賃貸経営者向けに情報誌「オーナーズ・スタイル」を発行する出版社、オーナーズ・スタイル(東京都中央区)が、首都圏や関西の読者を対象にアンケート調査を行ったところ、回答した747人のうち、半数以上の397人が、何らかの事件・事故に巻き込まれた経験があることが分かったのだ。

 同社の取材で、例えば次のような話を聞いたという。長年入居している中年男性の勤務先から、転勤を拒否して出社しなくなったと連絡があり、「自殺しているかもしれない」と安否確認の依頼があった。警察官と男性の部屋に駆け付け、何度もインターホンを鳴らし、大声で呼びかけるも反応がない。思い切って合いカギで部屋に入ると、2DKのほとんどの空間がゴミで埋まっていたという。

 ゴミと天井のすき間はわずか数十センチ。男性は部屋にいなかった。その後、男性と連絡を取ろうと試みたが、手紙を入れても反応なし。電話機もゴミに埋もれていたためか、つながらなかった。会社を訪問すると警告してようやく連絡がつき、ゴミを片付けることを約束してくれたという。連絡がつかなかった間も、自宅で生活していたようだ。

 ゴミ問題は、賃貸経営とは切っても切り離せないようで、燃えるゴミやプラスチック、缶などを分別せずにゴミ捨て場に出して、収集されずに置いていかれるケースも多い。入居者を特定して注意することでたいていの場合は改善されるが、ワンルームの単身者に多く、入居や退去の際には、ゴミの出し方を細かく指導しなければならないという。

 同社によると、昔と比べて入居者の情報感度や権利意識が高まる中、入居者が原因のトラブルも増えてきているという。アンケートは、大家さんの実態や悩みなどを把握し、その結果を賃貸経営に生かしてもらおうと2015年12月に実施したものだ。

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