「かつては店側が負担していたローションやコンドームといった備品も個人事業主である女の子に負担を強いるケースもあります。そんな状態なので単価は抑えられますが、それでも店は潤わないですね」(前出の男性従業員)

 通常、風俗店では客が支払う代金の約半分が風俗嬢の取り分といわれている。カナコさんが働くファッションヘルス店は、「30分8000円」という価格設定だ。

「30分で4000円がわたしの収入です。8時間お店にいて8人もお客がつけば3万2000円稼げますが、そんなことはめったにありません。その日の収入から、交通費や備品、食事代を差し引くと手元に残るお金はごくわずかです」(カナコさん)

 一方、SMクラブはさらに深刻だ。現在、全国的にSMクラブは、プレイルームの設置が禁止されているため、ホテルなどに風俗嬢が出向いてのサービスが主流となっている。かつてのように設備投資のコストはかからないが、非日常感が演出できないため、その分、客足は落ちたという。関西地区のSMクラブ関係者が明かす。

「HPを開設してキャストの女の子の近況を伝えているが、平日だと客が来ない日もある。土日の休日でも朝10時頃から24時まで10人程度。1時間で2万円、お客から頂いているけれど、店とキャストの取り分は折半。休日で10万円前後の売り上げにしかならない」

 SMクラブの場合、衣装や備品購入のため10万円程度の費用がキャストと呼ばれる女性側の負担となることも珍しくない。 契約社員として勤務の傍ら、SMクラブに勤務するサヤカさん(35)は現状をこう嘆く。

「皮の衣装、その他、仕事で用いる各種備品の購入でトータルで12万円ほどかかりました。これを回収するのに2カ月くらいかかりました」

 ずっと不況知らずと呼ばれた風俗業界だが、最近では、ここもご多分にもれず、前線で働く者にシワ寄せが来ているようだ。

(フリーランスライター・秋山謙一郎)

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