デフレ化の波は風俗嬢にも押し寄せている。今や風俗嬢の収入は、アルバイトの定番、コンビニエンス・ストアの時給よりも低くなるケースも続出している。あまりに低すぎる収入で働く風俗嬢の実態に迫った。
大阪市内のファッショヘルス店で働くカナコさん(27)は明るくかわいい感じの美女。普段は、文化人類学を研究する大学院生だ。大学院へ通うには学費のほか、研究費や生活費がかさむ。それを短期間で賄おうと風俗の世界に身を投じた。
「私の都合でシフトは比較的、自由に入れて頂くことになりました。その代わり雇用契約ではなく請負契約だったんです。この場合、お客がつかなくても頂ける『お茶代』も出ません。個人事業主として、風俗店の一室を借り、そこで営業するという形です」(カナコさん)
研究生活の傍ら、早朝、午前、午後、夜……と平日、土日を問わず、不定期に出勤するカナコさんは、その不確実な“出勤”ゆえ、客がつきにくい。平日朝9時から17時までの8時間働いたが、客はひとりもつかない日もあったという。
「結局、狭いプレイルームのなかでドイツ語の原書の翻訳に費やす時間となりました。お店にはご厚意でお弁当とお茶の差し入れを頂きました。でも、稼ぎはゼロ……」(同)
京阪神地区の風俗店で“黒服”と呼ばれる男性従業員として約20年のキャリアを誇る40代男性は、「90年代後半のブラック・マンデー、00年半ばのリーマン、サブプライム、その後の円高不況と、金融危機に直面するたび、風俗店と風俗嬢の“デフレ”化が著しい」とその内情を明かす。
「風俗店は女の子あっての商売。だから大勢の女の子をキャストとして抱えていたい。しかし不況の波が来るたびに、美人さんやかわいい子が年齢問わずやって来る。その子たちを受け入れる苦肉の策として請負契約で店に入ってもらった。けれど、やっぱり素人、プロの接客の技(わざ)を身に着けていないから客もつかないという事情もある」
もっとも、かつてはプロの接客を研修して店舗に出したものだが、今ではそれを伝えられるだけの技術を持つ風俗嬢も少なくなり新人研修もままならないという。研修にコストをかけても回収できるかどうかわからない。それに加えて、男性の草食化、風俗嬢の質の低下による客足の鈍化で一部の風俗店の経営は“青息吐息”という。