――コミックマーケットに出展した『宇宙戦艦ヤマト』やジブリなどの同人誌も話題になりました。それだけ忙しい中、コミケに出展する理由は?

 TPPの導入で同人誌が制限されてしまい、コミケができなくなるかもしれないという話がありましたよね。それまで同人誌を作ったことはなかったけれど、やっておかないと後悔するぞと思いました。やってみると、ものすごく面白い。今まで商業誌では絶対に寸止めにしていたダイレクトなパロディーを、たがが外れたように「どうだ」というほどやってしまいました(笑)。話題にはなりましたが、いつ訴えられてもおかしくないですね。自分のタイムリミットを考えた時に残したいものの一環に、同人誌はありました。コミケがある限り、これからも描き続けていこうと思っています。

――京都精華大学では准教授としてギャグマンガコースを担当されています

 京都精華大学でおおひなたごう先生が生徒に教えているのを見て、純粋にうらやましいなと思っていたんですよ。若い人たちに伝えられる何かを、少しでもきちんと伝えていけたらすごく嬉しいことです。それに、生徒に教えるとなると、ギャグってどんなものかなと改めて分解して整理して考えないといけない。けっこう苦労しますが、ギャグ漫画の基本構造やロジックなどをがっつり生徒たちに教えて、生徒たちのスキルが上がっていくと面白くて、実にやりがいを感じています。

 今年の春にはギャグマンガコースの生徒が3人、プロデビューしました。ギャグマンガコースはまだ出来て間もないですが(2013年創設)、在学中に連載が持てたことは一つの大きな成果であり、竹健太郎さんを始め、おおひなたごう先生、ひさうちみちお先生が、基礎固めをしっかりやってこられたことの成果だと思います。

――田中先生といえばやはり“下ネタ”ですが、今後も下ネタ漫画は続けていくのでしょうか?

 そうですね。でもこの歳になると、下ネタきついんですよ。10代や20代とかだとナチュラルに出てくるものですけど、50過ぎてこんな中学生みたいなネタを描いて(笑)。僕はずっとそれでやってきたというのもありますけど、今、あまり下ネタでバーンと押してくる漫画家さんがいなくなりました。商業誌では、特にやりづらくなっていますよね。

 だから本当に「Gのサムライ」は、よくぞやらせてくれたと編集者さんに感謝しています。普通は「田中さんちょっと待って」と、後ろから羽交い絞めするのが編集者の仕事じゃないですか。そうではなく、「大丈夫、大丈夫」と背中を押してくれる人がいて、ああなりました。おかげさまであれもネット上で反響が大きくて、やっぱり自分のテイストはこれだよなと思いながら描けているのが嬉しいです。

 だんだん世の中が窮屈になって、下ネタもできなくなっていますからね。「きれいな田中圭一」も好評ですが、やっぱりきれいな方に振れるためには、逆側に思い切りバイアスをかけておいて、ポーンとタガを外さないといけないと思います(笑)。