史実によると、北陸新幹線の営業区間は、江戸時代の参勤交代のルートに近いらしい。加賀藩前田家が12泊13日の行程で移動した金沢―東京間は今日、最速2時間28分で結ばれている。首都圏との距離は一気に縮まり、北陸への客足は好調……前田家歴代のお殿様はさぞお喜びのことだろう。
とはいえ、北陸の駅の整備状況には大きな差がある。観光立県として快進撃を続ける石川県の金沢駅はぬかりないが、富山県内の3駅は現在進行形の部分も……。観光客への対応に追われる両県民の声を拾ってみた。
金沢駅は、米国の大手旅行雑誌「トラベル・レジャー」のウェブ版で、日本国内では唯一「世界で最も美しい駅14選」に選出された。東広場は雨傘をイメージした総ガラス製の巨大な「もてなしドーム」で覆われ、どっしりとした鼓門は「北陸の玄関口」としての存在感を漂わせる。
北陸新幹線開業を見越して、早々に整備を進め、1991年には駅の高架化が終了、もてなしドームと鼓門は2005年に完成していた。また、大型商業施設・金沢フォーラスは06年に開業し、北陸3県において、「ショッピングは金沢で」という流れをつくり上げていた。10年先を見越した戦略は「見事」のひと言に尽きる。
ある金沢市民は「金ぶら」といって、観光客に交じって金沢駅構内を散策し、「何年か前にさっさと開店して、ひたすら、金沢開通を待っていた。狙い澄ましたスマッシュヒット」と大いに満足した様子だった。
一方、富山市民からは「観光客が富山駅の正面に出てみたら工事中というのは、申し訳ない気分」との声があがる。