年齢を重ねると、脂っぽくこってりしたものが苦手になるという話はよく聞く。そして、“肉食”から、野菜と魚が中心の食生活に自然と移行する人も少なくない。

 けれど、ここには落とし穴がある。実は“シニアこそ、肉を食べるべき”なのだそうだ。長年、高齢者の健康と食生活について調査を続ける、東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二研究部長は、11月22日付の朝日新聞で最近の高齢者の傾向を「メタボリック症候群を気にしすぎている」と指摘している。

 中高年の場合は、メタボ予防のため、内臓脂肪がたまらないように脂をひかえた食事を勧められる。だが、高齢者の場合は肉類をひかえる必要はない。そもそも高齢期なると、人のからだは摂取した栄養から体を作る力が衰えてしまう。さらに肉に含まれるたんぱく質は骨や筋肉をつくる大事な栄養素。それをひかえてしまうと、骨がもろくなり、筋力も衰えてしまい、転倒や骨折の危険も高まる。新開氏は「半年間で自然に体重が3キロ減ったら要注意」という。

 肉食することで得られる動物性たんぱく質には、人が体内で作りだすことのできない「必須アミノ酸」が豊富に含まれている。さらに肉には、鉄分やビタミンB類が多く含まれているので、貧血予防や筋肉を維持する効果も期待できる。もちろん肉ばかりを食べていればよいというわけではない。肉や魚、豆類、卵、乳製品などをバランスよくとることが必要なのは当然だ。

 ところで肉食と言えば「洋食」となりがちで、それも高齢者が肉食から遠ざかる理由のひとつだろう。だが刺身や焼き魚といった魚料理を連想しがちな「和食」にも、焼き鳥、牛のしぐれ煮や肉じゃがなどのお総菜から、すき焼きやしゃぶしゃぶなどまで、肉がメインの料理も数多くある。「もう歳だから」と敬遠せずに日常の食生活に積極的に肉料理を取り入れることが、「丈夫で長持ち」の長寿の秘訣と言えそうだ。