もしも、非常用発電装置が地上6メートル以上に取り付けられていたら、どの原子炉も無事で、爆発事故は起きなかったのである。
明治期に入ってから、地震が生じて津波が襲ってきても、高さは10メートル以下だった。そのため、福島第一原発の防波堤は10メートルであった。ところが、2008年に社内の試算で、約1200年前の貞観(じょうがん)地震の時には15メートルの津波が襲ったことがわかっていたのである。それにもかかわらず、なぜ東電は15メートルの津波を防ぐ防波堤に直さなかったのか。
事故後に就任した新社長に問うと、
「防波堤を高くしなければとは考えていたのだが、膨大な費用がかかるので、そのうちにと思っている間に津波に襲われてしまったのだ」
と答えた。
第二の敗戦後、フィンランドのオンカロ(使用済み核燃料を保存する、地下500メートルのところに設けられた施設)を見学した小泉純一郎元首相は、オンカロに保存した使用済み核燃料が無害化するのに10万年かかると聞いて、原発ゼロを強調するようになった。
ところが、日本にはそのオンカロはなく、オンカロがつくれる見込みもついていない。それにもかかわらず、日本政府は原発を新設する計画を決めている。このことは、どう捉えればいいのか。
※週刊朝日 2020年3月27日号