ここで問題となるのは、忖度(そんたく)だ。安倍首相も麻生財務相も、佐川氏に虚偽の答弁をせよとか、公文書の改ざんをせよとは命じていないのだろう。現に、佐川氏以下、改ざんに関わった官僚たちはそれなりの処分をされている。
だが問題は、なぜ忖度をしなければならなかったのか、ということだ。
佐川氏にしても、国会での虚偽の答弁や、部下に公文書の改ざんを強要するなんてことはしたくなかったはずである。いやしくも、民主主義をうたう国ではあってはならないことである。
佐川氏は、そんなことは百も承知していたはずなのに、なぜやってはならない忖度をせざるを得なかったのか。ここが大きな謎である。
おそらく佐川氏は、そのような忖度をしなければ、自分の現在の地位を保持できない、そして近畿財務局に政治圧力がかかる、と強く感じたのであろう。
その謎は、なぜ森友学園への国有地売却価格が約8億円下げられたのか、という重大問題に直結する。
野党は、赤木氏の自殺、そして佐川氏の忖度についての再調査を強く求めている。それに対して、安倍首相も麻生財務相も、その必要はない、と答弁している。拒否するのは、重大な謎に対する再調査をされると大いに困るからではないのか。
※週刊朝日 2020年4月3日号