田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
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イラスト/ウノ・カマキリ
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 ジャーナリストの田原総一朗氏は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大とグローバリズムについて論じる。

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 新型コロナウイルスの感染がすさまじい勢いで世界中に広がり、欧州の先進国、そして米国でも医療崩壊が起きている。このままでは、日本でも医療崩壊が起きる危険性が高い。

 私は、第3次世界大戦が起こるとすれば、おそらく核戦争だろうと考えてきたのだが、新型コロナウイルス感染者の世界的拡大は、これこそ人類の文明の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した、第3次世界大戦ではないのか。現在のところ、これを抑え込める方策はなく、世界中が恐怖におののいている。

 そして3月31日に、朝日新聞と日本経済新聞で、新型コロナとグローバリズムについての興味深い考察が掲載された。

 朝日新聞に載ったのは、京都大学名誉教授の佐伯啓思氏の論文である。

 佐伯氏が指摘する現代文明の脆弱さとはどういうところなのか。

<現代文明は、次の三つの柱をもっている。第一にグローバル資本主義、第二にデモクラシーの政治制度、第三に情報技術の展開である>

 そして、<このパンデミックを引き起こしたものは、冷戦以降のグローバリズムである>と指摘している。

 グローバリズムとは、ヒト・モノ・カネが国境を超えて世界市場で活動する、またそれができる、ということである。

<そして、グローバル経済のひとつの中心が中国であった。中国が世界の工場になり、各国は中国の市場をあてにして自国経済を成長させようとした。世界中が中国頼みになったのであり、この各国の戦略が、中国発のウイルスによって逆襲されたわけである>

 たしかに、新型コロナウイルスが発生したのは、中国の武漢である。

 そして佐伯氏は、<結果的にパニックを助長したのはテレビの報道番組でもあり、その大半は、私にはドタバタ劇としか思えなかった>と書く。

<私には、政府を批判する報道番組も相当に場当たり的であるように見えた。政府批判をしつつ政府に依存し、問題の解決を政府に委ね、できなければ政府の責任を問うというこの構造は、今日の情報化社会のデモクラシーの姿そのものである。こうなると、政府の説明不足も含め、情報化とデモクラシーがパニックを増幅しているということも可能だろう>

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