ジャーナリストの田原総一朗氏は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大とグローバリズムについて論じる。
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新型コロナウイルスの感染がすさまじい勢いで世界中に広がり、欧州の先進国、そして米国でも医療崩壊が起きている。このままでは、日本でも医療崩壊が起きる危険性が高い。
私は、第3次世界大戦が起こるとすれば、おそらく核戦争だろうと考えてきたのだが、新型コロナウイルス感染者の世界的拡大は、これこそ人類の文明の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した、第3次世界大戦ではないのか。現在のところ、これを抑え込める方策はなく、世界中が恐怖におののいている。
そして3月31日に、朝日新聞と日本経済新聞で、新型コロナとグローバリズムについての興味深い考察が掲載された。
朝日新聞に載ったのは、京都大学名誉教授の佐伯啓思氏の論文である。
佐伯氏が指摘する現代文明の脆弱さとはどういうところなのか。
<現代文明は、次の三つの柱をもっている。第一にグローバル資本主義、第二にデモクラシーの政治制度、第三に情報技術の展開である>
そして、<このパンデミックを引き起こしたものは、冷戦以降のグローバリズムである>と指摘している。
グローバリズムとは、ヒト・モノ・カネが国境を超えて世界市場で活動する、またそれができる、ということである。
<そして、グローバル経済のひとつの中心が中国であった。中国が世界の工場になり、各国は中国の市場をあてにして自国経済を成長させようとした。世界中が中国頼みになったのであり、この各国の戦略が、中国発のウイルスによって逆襲されたわけである>
たしかに、新型コロナウイルスが発生したのは、中国の武漢である。
そして佐伯氏は、<結果的にパニックを助長したのはテレビの報道番組でもあり、その大半は、私にはドタバタ劇としか思えなかった>と書く。
<私には、政府を批判する報道番組も相当に場当たり的であるように見えた。政府批判をしつつ政府に依存し、問題の解決を政府に委ね、できなければ政府の責任を問うというこの構造は、今日の情報化社会のデモクラシーの姿そのものである。こうなると、政府の説明不足も含め、情報化とデモクラシーがパニックを増幅しているということも可能だろう>