作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、新型コロナウイルス感染症が拡大する現状から、日本の風俗産業を論じる。
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立憲民主党の高井崇志議員が、緊急事態宣言が出された2日後に風俗店に通っていたことが、週刊誌で報じられた。セクシーキャバクラ、略してセクキャバ、通称おっパブとかいちゃパブとか言われる業種で、胸を強調した服を着た女性が接客し、濃厚接触できる風俗店だ。
私はこの議員を、今回の報道まで知らなかった。無名な国会議員なんていくらでもいて、街を歩いていても、店に入っても、電車に乗っても気がつかれずに「いつもどおりに暮らす」癖がついている人は少なくない。週刊誌によれば、この人も、「ばれた」ことを本当に驚いていたようだ。
今、営業している風俗店はどのくらいあるのだろう。小池百合子都知事はソープランドや、ストリップ劇場、のぞき部屋を自粛要請対象にしたが、セクキャバや、デリヘルの営業には触れていない。実際、セクキャバの店のHPを見ていると、通常営業している店も少なくないようだ。
風俗店のHPを確認するとき、癖のように求人のほうも一緒に見るようにしている。大抵の場合、男性客向けのアピールと、従業員募集向けの文言が激しく違うことが多いからだ。例えば、子どもが着る体操服姿で女性が接客するような某セクキャバのHPには、女性たちが胸を出した姿で四つん這いになっていたり、お尻を突き出したりする写真を並べ「お客様第一主義!」と、何でもできそうな雰囲気を醸し出しているが、一方で女性求人サイトのほうには「お客さんと楽しく話すだけで稼げますよ♪」「好きな服着て、あなたの都合のよいときに出勤すればいいから♪」といった軽いのりで月収50万円稼げます~♪と悪魔の調べが流れてる……ように見える。
三重大学の岩本美砂子教授が1997年に発表した「女のいない政治過程」という論文が今、注目されている。行政、立法、司法、全ての過程に女性が不在であるこの国のジェンダー問題を問う論文だ。世界各国で女性リーダーが活躍する現代、なぜ日本だけが90年代と同じ「オッサン(だけ)政治」を継続させているのか。その弊害は何か。20年前に書かれた論文がいまも、強く新しい。