

「かもめが翔んだ日」「唇よ、熱く君を語れ」など、数々のヒット曲で知られるシンガー・ソングライター、渡辺真知子さん。太陽のような笑顔とポジティブなエネルギーに、その場がぱあっと華やぎます。作家の林真理子さんが、渡辺さんの歌に突き進む人生についてうかがいました。
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林:コロナ、大変でしたでしょう?コンサートも中止になったりしたんですか。
渡辺:全部ダメですね。今月から再開する予定です。新しくリリースするアルバム(「明日へ」)も、4月発売の予定が7月になってしまって。
林:聴かせていただきました。「唇よ、熱く君を語れ」って、カネボウ化粧品のCMソングだったんですよね。アレンジが凝りに凝ってて、いかにも2020年バージョンという感じで、違う曲みたいでした。
渡辺:ああ、うれしいですね。今年のはじめ、若手が歌ったカネボウのコマーシャルが流れて、それがとても素敵だったので、何か新しい試みをしなきゃということで、自分でアカペラの多重録音でやりました。
林:作詞した東海林良さんを存じ上げています。あのときも「唇よ、熱く君を語れ」って女性のためのキャッチコピーみたいでいいなと思ってましたけど、それが今となるともっと深い意味を持ってるんだなとつくづく思いました。
渡辺:うれしいです。あれは40年前につくった曲なんです。
林:あのCMのキャンペーンガールは誰でしたっけ。
渡辺:松原千明さんですね。
林:そうだ、石田純一さんの奥さんだった人。昔の化粧品のキャンペーンって、資生堂にしろカネボウにしろ、今とスケールが違うというか、時代そのものを切り取って、「今年の女性はこうだぞ」という感じのキャンペーンで、単なるCMじゃなかったですよね。
渡辺:そうです。合戦でしたよね。
林:私がちょうどコピーライターを始めたころかな。一度でいいからこういう仕事にかかわってみたいと思ってましたよ。あのころ、女の人の唇は薄くて小さいのがいいと言われて、私なんかメイクさんにおちょぼ口を描かれましたけど、今はみんな唇が厚くなっちゃって。
渡辺:林さんは今はやりの唇ですよね(笑)。
林:そう。ちょっと生まれてくるのが早すぎた(笑)。今度のアルバム、ジャズも入ってるし、「WINNERS GOAL」というのはオリンピックを意識した曲ですか。
渡辺:それもあるし、みんな元気になってほしいなというのがあって、ファンファーレもつけたんです。