野田政権が進める増税法案の審議に応じる代わりに、公明党が、年金も含めた「税と社会保障の一体改革」の全容を明らかにせよと迫った。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、与党が新年金制度の具体案を示さないことに対し、「理由は明快だ」と言う。

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 何故、民主党は最大の公約であった年金改革案について具体策を出せないのか? 理由は明快だ。それは、システムのどこをどういじっても、持続可能性を重視すれば多くの人の年金が現在より下がることになるからだ。

「できるはずのないマニフェスト」で政権を取った民主党は、昨年6月、消費税引き上げの党決定をする前に、年金関連のマニフェストを実現するにはいったいどれほどの費用が必要かを極秘に試算していたのだ。その案は、1月26日に朝日新聞が詳細に伝え、その後各メディアが追いかけて、今や周知の事実だ。

 これによれば、岡田代表時代に掲げた消費税3%で最低保障年金を実現しようとすれば、ほとんどの人の年金を今より相当程度引き下げなくてはいけないことが明らかにされている。私のような素人が5年以上も前に計算して明らかだったことに、何故、大政党が今になって気付くのか、それ自体が驚きだが、あろうことか民主党は、その計算結果を今に至るも「なかったこと」にして封印している。

 それはそうだろう。消費税を上げたうえ、ほとんどの人の年金が現在より大幅に引き下げられる政策を、公表できるわけがない。しかしここに、年金の真実がある。

 先ごろ5年ぶりに更新された政府の人口推計によって「一人の現役世代が、一人の高齢者を支える未来」が改めて鮮明に浮かび上がった。現状を維持するも地獄、制度を改革するも地獄の日本の年金に未来があるのか?

※週刊朝日 2012年1月27日号