厚生労働省のクラスター対策班を務める西浦博氏(43)が、北海道大学教授から京都大学教授へと移籍した。所属は大学院医学研究科で、新たな職場で引き続き新型コロナウイルスを相手に奮闘することになりそうだ。やはり「8割おじさん」は引く手あまたなのだろうか。
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医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、首をかしげながらこう語る。
「北大も京大も旧帝国大学(他に東京大や大阪大など7校)ですが、われわれの業界の常識からすると、教授として旧帝大間を移籍するのは仁義にもとることです。もちろん、地方大学をステップに旧帝大で教授というルートはあり得ますし、准教授や助教授など見習い期間の人は別です。西浦氏は2016年に若くして北大教授に就任したばかり。北大としても、時間をかけて研究室をしっかり運営してほしいと考えて招聘(しょうへい)したと思うのですが」
西浦氏が「対策を何もしなければ重篤患者数が約85万人に上り、そのうちのほぼ半数が死亡する」との衝撃的な試算を発表したのは、緊急事態宣言下の4月15日のこと。感染拡大を抑制するために人との接触を8割減らすことを提唱し、自ら「8割おじさん」と名乗った。
京都大学大学院教授(社会工学)の藤井聡氏はこう批判する。
「政府の誤った感染症対策によって、日本経済は疲弊し、倒産や失業が激増しました。西浦氏はその科学者責任を最も負うべき人物の1人だと思います。実は、新規感染者数は3月27日をピークに減少に転じていました。緊急事態宣言が発令された4月7日時点ではその事実がわからなかったと思いますが、4月末には専門家なら誰の目にも明らかでした。緊急事態宣言や8割自粛は、少なくともピークアウトには不要でした。しかし、西浦氏や専門家会議は政府に緊急事態が解除できる可能性を示唆せず、延期を支持したのです。政治判断に必要な情報を提供しなかったのは、専門家として怠慢と言われても仕方ありません」