◆2号機の「きれいさ」が原発の耐震脆弱性を示した◆
(サイエンスライター・田中三彦)
非常に重要な映像ですが、残念ながらこの外観映像だけでは、1~4号機に何が起きたか、政府や東京電力がこれまで言ってきたことは正しいのか、そういうことまでは判断できません。
とはいえ、いくつか驚くべきこともあります。2号機の原子炉建屋がこれほど"きれい"だったとは。
しかし、3月15日早朝、地下にあるドーナツ状の格納容器圧力抑制室付近で爆発が起き、圧力抑制室が大きく破損したという事実があります。地上の外観とは裏腹に、地下の部分は相当破損しているはずです。
東電はいまだにその爆発原因について触れようとしませんが、おそらく地震で圧力抑制室本体の溶接部に亀裂が入り、そこから水素ガスが漏れ出して爆発したのだろうと思っています。
しかし、もしそうだとすると、原発が、津波ではなく地震の揺れで重大な損傷を負ったという「耐震脆弱(ぜいじゃく)性」の問題が浮き彫りになるので、東電も保安院も、2号機の爆発については黙っているということだろうと思います。
この映像を見てもう一つ興味深いのは、4号機の損傷状況が想像していた以上に無残であるということです。1、3号機の破壊が原子炉建屋上部に集中しているのに対して、4号機の破壊は、全体的です。外見的には1号機以上にひどい。
ところが、4号機に何が起きたのかを、東電はこれまた詳しく説明していないし、何も断定していません。3号機と共用している排気筒を経由して水素や放射性物質が4号機に流入し、水素爆発が起きたなどと大まかには説明していますが、流入だけで、あれほど無残なまでに破壊されるのかどうか、きわめて疑問です。
さらに不可解なのは、4号機の水素爆発は、その映像を見た人が誰もいないこと。映像があるのに政府や東電がそれを隠しているのか、それとも本当に爆発映像が存在しないのか、とても気になります。もしかすると実は4号機も相当激しい水素爆発を起こしたのかもしれません。
水素爆発の着火源も気になります。水素爆発が起きるには酸素だけでなく、着火源も必要です。一般によくある着火源は電気的スパークですが、全交流電源喪失状態であったので、電気的スパークは起きようがありません。周辺環境の温度が600度にもなっていれば爆発するでしょうが、とくに4号機の原子炉建屋内がそういう温度になっていたとは考えにくい。
3号機にいたっては水素爆発ではなく、使用済み核燃料プールで「核爆発」が起きたのではないか、という説もあります。確かに、爆発時にキノコ雲状の爆煙が上昇していくさまはそれをほのめかすのに十分であるようにも思えます。しかし、今回のスクープ映像から、核爆発を証明することは難しいでしょう。
と言っても、私が核爆発を否定しているわけではありません。真に重要なことを政府も東電もいっさい明らかにしていないからです。
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たなか・みつひこ 1943年、栃木県生まれ。68年に日立製作所の関連会社「バブコック日立」に入社、福島第一原発4号機の圧力容器などの設計に関わった