林:会社勤めをしながら漫画の連載を持ってらしたんですか。
しりあがり:会社員が軸だったので大きな仕事はできなかったですけど、4コマ漫画を月1本描くとか、そんなのはやってましたね。
林:上司の方はご存じだったんですか。
しりあがり:途中でカミングアウトしました。単行本を出すときに、「もしかしたら売れちゃうかな、売れちゃったら耳に入るだろうからヤバいな」と思って。それで「今度こういう単行本を出すんですけど」って部長に言ったら、「僕たちが休日にゴルフをやるようなもんだから、かまわないよ」って。まあ結局、その本はあんまり売れなかったんですが(笑)。
林:まあ、やさしい……。あ、でも「休日にゴルフをやるようなもの」って、プロとしてはちょっとムカつく言い方かもしれない(笑)。じゃあ、そのころから収入はかなりあったんですね。
しりあがり:かなりではないですけど、13年勤めて、その間にぼちぼち漫画を描いてきて、会社をやめるころには「何とか漫画だけでも食えるんじゃないかな」というぐらいになってましたね。
林:独立してすぐに朝日新聞の夕刊の連載(「地球防衛家のヒトビト」)の仕事が来たんですか。
しりあがり:独立したのが1994年で36歳のときでしたが、朝日新聞の連載を始めたのは2002年だから、あいだが8年くらいありましたね。
林:新聞の連載ってうれしいでしょうね。
しりあがり:毎日のことなので、生活のリズムが決まってきて、サラリーマンみたいなものですね。新聞連載を始めて、また就職したみたいなところがありました。
林:でも、すごいプレッシャーじゃないですか。
しりあがり:確かに(連載を)切らせるわけにはいかないというのがありますよね。それと、新聞はいろんな人からチェックが入るじゃないですか。その意味では神経を使いますね。
林:時事ネタとか世相を反映したことも描かれてますけど、漫画でお説教がましくならないようにするのって難しいですよね。オチもつけなきゃいけないし。
しりあがり:そうなんですよね。「これは笑っちゃいけない」とか「笑っていい」とかいうことが時代によっても変わってくるので、そこらへんのあんばいが難しいですね。