今でこそ、お笑い一筋の姿勢が先輩芸人からも評価される存在だが、子供の頃は、お笑い芸人になりたいなんてこれっぽっちも思っていなかった。

「小学生の頃は、おとなしかったです。でも、クラスの中心にはいないけど、クラス全員を爆笑させた記憶は何回かあって(笑)。『もしかしたら、面白いことを考えられるタイプなのかも』ぐらいは思っていましたね」

 後藤さんがお笑いの道を意識し始めたのは、高校でのちの相方となる福徳さんと出会ってからだ。

「福徳は、子供の頃から将来は芸人になりたいと思っていたみたい。僕も、高校のラグビー部で福徳と出会って、お笑いみたいなことを遊びでやりだしてから、ぼんやりと『これを仕事にできたら幸せやろな』と思うようになりました」

 高校卒業後は、大学に通いながら吉本総合芸能学院(NSC)で本格的にお笑いを学んだ。

「最初は漫才をやっていたんですが、なかなかうまくいかなくて。苦し紛れに、高校の時にやっていたコントみたいなことをやってみたら、それが思いの外評判が良かった。日常では絶対に、こんなこと初対面の人に言われへん、電車の中でこんな行動をとったらやばいってことを、コントの中なら平気でできる。それが楽しかったんです(笑)」

 漫才では、一人が何かを発言すると、もう一人が、「なんでやねん!」「おかしいやろ!」と突っ込む。でも、現実にはそんな会話はそうそうありえない。ならば、突っ込みの態度を極力リアルにすることで、全体の雰囲気が誰にとっても「あるある」な体験になり、そこから少しずつ主題がずれていくことで面白みは出せないだろうか。彼らのコントは、そんな考察が基になっていた。

「設定にリアリティーが出れば出るほど、コントをやっている僕らもストレス解消になるんです。芝居もそうですよね。日常生活ではなかなか出せない感情を爆発させたりできるから、演じるのが楽しいんじゃないですか」

(菊地陽子、構成/長沢明)

後藤淳平(ごとう・じゅんぺい)1984年生まれ。大阪府出身。2003年ジャルジャル結成。07年に映画デビュー。10年にジャルジャル主演映画「ヒーローショー」(井筒和幸監督)が話題となり、12年にも「営業1∞万回」でジャルジャルとして主演を務める。15年、18年ともにM−1グランプリ3位。19年にはキングオブコントで3位、今年は優勝を果たした。YouTubeの「ジャルジャルタワー」は毎日18時にアップ。

>>【後編/ジャルジャル YouTubeで毎日配信「6年間、ネタ切れ一度もない」理由】へ続く

週刊朝日  2020年10月16日号より抜粋