AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。
世界各地に熱狂的なファン「ARMY」を持つ「BTS(防弾少年団)」について、米韓で活躍する音楽評論家が彼らの音楽と人気を論じる、初の本格的BTS論『BTSを読むなぜ世界を夢中にさせるのか』が刊行された。著者のキム・ヨンデさんに、同著に込めた思いを聞いた。
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韓国が生み、世界が育てたボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」。8月にはデジタルシングルとして発売された「Dynamite」がK−POPとして初めて米ビルボードのシングルチャート「Hot100」で、1位となる快挙を成し遂げた。
本書は今やまごうことなき世界のトップアーティストになったBTSの音楽と人気の秘密について論考した、初の本格的評論だ。
「彼らの魅力、成功の理由は単純ではありません。私はこの本でBTSとメンバーがリリースした16枚のアルバムのレビューにもっともページを割きました。曲が持つ意味と魅力を音楽の観点から徹底的に読み解くと同時に、BTSを初めて聞く人にとってガイドとなるような視点を生み出したかったからです」
そう語るキム・ヨンデさん(42)は、2007年から米シアトルに暮らし、様々なメディアに音楽評論を寄稿してきた。BTSのライブやイベントにも参加してきた、目撃者でもある。
キムさんはBTSのアルバムを時系列に追いながら、ヒップホップジャーナリスト、BTSのコンテンツ翻訳アカウント運営者やグラミー賞投票メンバーといった人びとへのインタビューを実施。BTSに関わった人びとの視点が複合的に示される構成になっている。
「BTSはアイドルの新しいモデルを作りました。ヒップホップグループをめざしたBTSは、地方出身であるというアイデンティティーを隠さず、彼ら自身のストーリー、自分の悩みや苦しみ、嘘のない姿勢をファンに見せました。また、ソーシャルメディアでファンダムと交流することで、ARMY(アーミー)(熱狂的なファン)を生み出した。皆さんご存知のように、ソーシャルメディアでは発言する人のボイスが伝わってきます。こうしたやりかたは人間としての魅力を持っているBTSだから可能だったわけで、形だけ真似ることはできないでしょう」